セルフブランディングでタレント性を磨こう
「美容師はタレント業です。今の時代に求められるのは技術力よりも発信力。その人自身のブランド力が売上を左右します」と開口一番に話すのは、兵庫県の加古川・播磨町で美容室を展開するL.H.Dコーポレーション代表、池田だ。SNSが当たり前となった今、スタイリストが個人個人で情報を発信できる時代となった。試される「個」の力。SNSを通じて、いかにセルフブランディングできるかが問われている。
「今の美容業界で流行っているサロンの多くは若手が主体。やはり若い世代はSNSを上手く使いますからね。その人がどんなスタイルを作るのか。どんなヘアケアアイテムを使っているのか。どんなプライベートを過ごしているのか。その美容師自身の生き方に共感と憧れを抱いたお客様がファンになっていくんです」
若い人材に大きな期待を寄せる池田は、キャリアのある美容師ではなく、二十四歳以下の若手美容師のみを積極的に採用。そして採用の基準も明確だ。
「美容やオシャレが好きかどうか。それって、セルフブランディングができる人とできない人の違いなんですよね。例えば美容好きと、そうでない子が同じスタートラインに立ったとします。根本に“好き"という想いを持った人は、InstagramやYouTubeなどから、日々のルーティーンで情報を取りに行ってるんです。常にアンテナを張っているから、感覚も感性も鋭い。情報をどんどん吸収しながら美的センスや世界観を自然と磨いていくので成長スピードも圧倒的に早い。“どうすれば売れるのか"を理解しているので、自然と自分をブランディングしていくんです」
目指すのは、いい意味で「力の抜けたサロン」
美容業界の黎明期は師弟関係が当たり前の世界。多くのサロンはトップダウンでサロンをつくり、若手は技術習得のために必死に食らいついてきた。
「僕が若手の頃って、朝から晩までレッスンは当たり前。コンテストはガンガン出ろ。それが当たり前となってしまった結果が今の美容業界。過酷な労働環境下で若手は次々と疲弊。美容師の道を諦める若手が後を絶たず、憧れを抱く若手も減ってしまいました。そんな業界に未来はあるのでしょうか? これからの美容業界は、サロンが次世代に寄り添う姿勢が大事でしょう」
三十歳以下の若手が活躍するL.H.Dグループ。次世代を率いる池田のサロンづくりは、若手主体のボトムアップ。現場の声に常に耳を傾け、働きやすいサロンづくりを行っている。
「営業時間内レッスンが基本となり、週一度だけ営業後に二時間だけ合同レッスンをします。それ以外は自由なので、ほとんどのスタッフが十九時の閉店とともに帰宅していますよ。完全週休二日制で、休日は一切の講習もしません」
しかし、それで成長できるのだろうか。池田は言う、前へ倣えのような押し付ける教育は古いと。「技術力は正直、ワンレン、グラデーション、レイヤーなど最低限のカット技術さえあれば売れますから(笑)。それよりもセルフブランディングのために、自分の“好き"と思うことに力を注いでほしいと思っています。その想いこそが原動力となり、どんどんと成長させてくれますからね」
十周年を節目に加速する次世代美容師のステージづくり
L.H.Dグループは今年で十周年を迎え、次の十年に向けて、さらなる拡大を図る。池田が目指すのは、若手が輝けるステージづくりだ。
「次の美容業界をつくっていくのは次世代美容師です。だから、新規出店でもトップスタイリストに任せるのではなく、若手美容師がメイン。売上も技術も関係ありません。苦労している姿を見てきたからこその、情ってやつですかね(笑)。イチから育てた子たちだから、平等にチャンスを与えていきたいんです。誰一人腐らせたりしませんよ」
スタイリストの離職数はゼロ。その数字の裏には、羽を伸ばしながら心地よく働き、未来へ大きく羽ばたいていける環境がある。
作品撮りは重要なトレンド発信の場、自由な発想が大事。
加古川を中心に明石へ出店、どんどん広げていきます。
レッスンはもちろん営業時間内、定時には帰ります。