apish ひぐちいづみさんのびよう道 母として、美容師として、そして幹部として。男社会に風穴をあけた、私の道。

 

美容室でも待遇や休日が大切と言われる時代です。もちろんそれも良いですが、美容人生のどこかで“心も体も美容でいっぱい”という時期があっても良いかもしれません。

「びよう道(みち)」は、そんな地道で壮大な鍛錬の道を歩んできた“美容の哲人”に、修業時代に一人前になったと思った瞬間や美容の哲学など、それぞれの美容の道を語っていただく連載企画です。

今回は、美容師として、母として、そして今はapishの幹部として——挑戦を重ねながら自分らしいキャリアを築いてきたひぐちいづみさん。原宿の一流サロンapishで、女性美容師として常に新たなステップを開拓し続けてきた彼女の“びよう道”とは。

美容の仕事が好き。でもそれだけじゃない人生も大切にしたい。そんな想いを持つ女性美容師さんに、きっと響くインタビューです。

 


 

原宿の美容師は寝る間を惜しむのが当然だった

 

 

あらためて振り返ると、アシスタント時代は本当に過酷でした。毎朝一番にお店に来て鍵を開け、最後まで残って鍵を閉める。朝は7時半とか8時にはお店に着いて、帰るのは終電が当たり前でした。30年近く前は、原宿が美容の中心地として圧倒的な存在感を放っていて、そこで働くというだけで覚悟が必要。「原宿を選ぶなら、寝る間を惜しんででもやらなきゃ通用しない」という空気があったんですよ。

 

私は、美容師になってからスタイリストになるまでに4年と2カ月ほどかかっています。他サロンの同級生たちはどんどんデビューして、メディアにも出始めていて……正直、焦りもありました。でもあるとき、坂巻(当時のサロン代表 坂巻哲也氏)に言われたんです。「デビューがゴールじゃない。美容師は、そこからがスタートなんだよ」って。その言葉が、すごく心に残っていて。早くスタイリストになりたい気持ちはありましたが、アシスタント時代にしかできない経験も、今思えば本当に貴重だったと思います。

 

 

たとえば、撮影のアシスタント、ヘアショーの仕込み、ブライダルの仕事、テレビや業界誌の現場——そういった仕事は、アシスタントだからこそ経験させてもらえたことが多かった。スタイリストになると、今度はアシスタントにその機会を譲る立場になります。だからこそ、「今この立場だからこそできること」を、全力で吸収したいと思っていました。自分で見て、感じて、動く。そうすれば、必ず誰かが見てくれている。そんな環境でした。

 

その積み重ねがあったからこそ、スタイリストになったときも、大きな不安はありませんでした。もちろん、「この場合どうするんだっけ?」と戸惑うことはありましたが、経験を通して学んできたからこそ、ある程度の自信は持てていたと思います。

 

>アシスタント時代の頑張りが、チャンスを手繰り寄せた

 

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