迷っても、不安でも。言葉に支えられて、ここまで来られた。 表参道の人気サロンNIMO.代表 和田かな子のコトダマ

美容師として歩むなかで、時に迷い、壁にぶつかる瞬間は、誰にでも訪れます。そんなとき、背中を押してくれるのは“言葉の力”かもしれません。シリーズ「美容師のコトダマ」では、第一線で活躍する美容師たちが心に刻んできた“人生を変えた言葉”を紹介します。
今回は表参道の人気店、NIMO.(ニモ)代表の和田かな子(わだかなこ)さんが登場。アシスタント時代から独立後まで、恩師と仲間の言葉を胸に歩み続けてきた彼女が、人生を変えた“コトダマ”を語ってくれました。
「昨日の自分に勝つことが、一番の成長だよ。」

アシスタント時代の私は、どんなレッスンでも「一番になりたい」と思っていました。チェックで合格をもらえることがゴールで、誰よりも早く「できるか・できないか」だけが自分の基準。ゴールを急ぐあまり、「努力の過程」を見ることを、すっかり忘れていたんです。
そんな私に、前職時代の恩師が言ってくれた言葉があります。
「周りと比べるんじゃなくて、いつだって昨日の自分と比べた方がいい。昨日の自分に勝つことが、一番の成長だよ。」
その瞬間、ハッとしました。私は結果にばかり目を向けて、日ごろの努力を測れていなかった。誰かより早い、誰かよりできる、ではなく自分自身にどれだけ本気で向き合えているか。そこにこそ、成長の本質があると気づきました。

それから私は、他人と比べるのではなく、常に自分と向き合っています。「昨日より丁寧に」「昨日より集中して」。一つひとつを積み重ねることで、自信が生まれました。誰かと競うのではなく、昨日の自分を超える。この考え方は、今でも私の原点です。
「プロは、誰に見られてもプロでいること」

アシスタントの頃の私は、とにかく人と仲良くなるのが早くて、お客さまともスタッフともすぐ打ち解けていました。
「人たらしだね」なんて言われることもあって、当時はその距離の近さが自分の強みだと思っていたんです。
でも、ある日、恩師である花渕(MINXplus代表 花渕慶太氏)に言われました。
「お客さまと仲良くできるのは和田の魅力だけれど、自分と会話している以外の人も幸せになる接客をしなさい」

その言葉を聞いて、ハッとしました。私は目の前のお客さまとの楽しい時間をつくることばかりに意識が向いていて、周りの空気まで考えていなかったんです。同じフロアには楽しく盛り上がるのが好きな若いお客さまもいれば、ゆったりとくつろげる環境を求めていらっしゃる大人世代のお客さまもいらっしゃいます。
美容師は、お客さまと一対一で向き合う仕事だけど、同時に多くの目に映る存在。どんな場面でも、誰に見られても“素敵だな”と思ってもらえること。それがプロとしてのあり方なんだと。
それからは、言葉遣いや姿勢、笑い方ひとつにも気を配るようになりました。フランクな接し方の中にも、きちんとした礼儀を忘れないように。どんなときも、プロは見られている。その意識を忘れないようにしています。
