NOOS岩屋真さんのびよう道 〜周りから評価されるようになっても、人の役に立ち続けること。そこからが本番だ〜
ロンドンの夢のステージに。視野が世界に広がる

カラーがいつ好きになったのか、その境界線は自分でもよくわかりません。当初は、カラーの楽しさに気づいてもいませんでしたから。デビューしてからも「有名になりたい」という気持ちは全くありませんでしたし、撮影やクリエイションにも興味がなくて避けていたくらいでした。ですが、カラーリストとして「カラーでは負けられない」というプライドはあったかなと思います。
自分の役割や使命感みたいなものを自覚し始めたのは、社内のコンペティションで賞を取れるようになったこと、雲の上の存在だった雑賀英敏(TONI&GUY JAPAN CEO)がロンドンから帰国し、目をかけていただくようになったことが非常に大きかったです。一緒に仕事をしていく中で、それまで見たことがなかった景色をたくさん見せてもらって、出したい色をイメージ通りに出せるようになってきてから”楽しさ”を感じるようになりました。イマジネーションには限界がないですから、まだまだできるという感覚でしたし、飽きることはなかったです。

美容師人生の大きな転機は、2015年にロンドンで開催されたTONI&GUYのコレクションです。世界各国の店舗から選ばれたカラーリスト8名しか立てない、誰もが夢見るステージでした。僕は雑賀さんのおかげでそこに立たせていただき、英語でプレゼンテーションをしたんです。感無量で、「まさかこんな美容師人生になるとは」と胸がいっぱいになりました。雑賀さんから「もう立っている場所はJリーグじゃないよ」と言われて、そこでワールドクラスの美容師を意識するスイッチが入りましたね。国内外ともに「価値を生める美容師になりたい」と、初めてそのとき思ったんです。
世界を肌で感じたことで視野が圧倒的に広がり、”海外から見える日本”について考えるようになりました。日本人だからできることは何だろうとか、日本人にしか出せない色は?など、日本人のDNAを深掘りしたくなり、伝統工芸のドキュメンタリーを見たり、日本文化について学ぶことも増えましたね。
日本人だからこそできることを追求し続けたい

そのステージから10年経った今も、日本人のアドバンテージを追求し続けています。海外に出るようになってから気づいたのは、日本人は学ぶ意欲や集中力が断トツに高いということ。また、かゆいところに手が届く能力も圧倒的に優れているので、人に対する配慮や”察する”チカラは、大きな強みです。
もうひとつ、日本人には”職人魂”があります。ひとつのことをとことん突き詰める力があるので、接客面でも「お客さまにもっとハッピーになってもらうためには?」などと、すごく考えますよね。そういうところも、誇りをもちたいと思うんです。日本人ならではのアドバンテージを活用して、世界の市場で新たな価値を生みたいなと考えています。

昨年はオーストラリアやアジアなど、7ヶ国14都市でセミナーなどの仕事をさせていただきました。海外の美容師と交流することで、自分のどんな力がその国で通用し、どういう人に必要としてもらえるのか、その答えが見えてくるんですよ。文化が違う方々に教えることで教育技術の幅も広がりますし、成長させてもらっている感覚があります。各国の人のスイッチがどこにあるのか、それを探すのも楽しいんですよね。
