apish ひぐちいづみさんのびよう道 母として、美容師として、そして幹部として。男社会に風穴をあけた、私の道。
apishの女性美容師のキャリアパスを切り拓いた

当時は、結婚や出産を機に退職するのが当たり前の時代でした。でも、apishは女性の働き方に理解がありました。それまで前例がなかったので、私がその前例になったんです。出産後も仕事はずっと続けていましたが、子育てって、基本的には自分のこと。会社の責任じゃないし、同じ職場のスタッフにも関係ないことだと思っていました。だからこそ、「仕事をするなら、ちゃんと向き合いたい」と強く思っていました。
お客さまだって、私が子どもを産んだかどうかなんて関係なく、時短の少ない枠に合わせて予約をとってくださる。だからこそ、私もその時間を絶対に無駄にしないように——そんな気持ちがどんどん強くなっていきました。変な言い方かもしれませんが、時間に制約がある中で働く以上、責任を持って仕事をしたい。その意識がより強くなったのは、母親になったからこそだと思います。
もちろん、子育てとの両立は本当に忙しかったです。沖縄に日帰りで出張に行ったこともあります。保育園の送り迎えも、両親に手伝ってもらいながら、撮影や現場仕事も続けていました。今でこそ「女性美容師も当たり前」と言われる時代になってきましたが、当時はまだまだ珍しかったんですよね。

うちの会社は、当時から比較的柔軟で、保育料の補助があったり、育児支援の手当も用意してくれていて、本当に助けられました。でも、他の会社で同じようなことを求めたら「会社に怒られました……」なんて話もあって。そういう時代だったんです。
私は「会社の中で育ててもらったからこそ、今の自分がある」と思っています。だから今は逆に、自分が経験してきたことを後輩たちに還元していきたい。撮影もそうだし、サロンワーク以外の仕事も経験してほしい。自分が歩んできた道を、次の世代につないでいきたいですね。
>年を重ねてもフロアに立ち続ける、元気なおばあちゃん美容師になりたい