TOH・石原慎太郎さんの“びよう道” 賢さより情熱を──のたうち回るほど没頭した時間が、未来を拓く
スタイリストになるとみんな鼻っ柱をへし折られた

苦労してやっとスタイリストになったら、今度は「俺が主役だ!と勘違いしがち。だけど、実際はそこからが本番でした。お客さまに支持されないと売上は上がらないし、お客さまは簡単にリピートしてくれなくなる。僕も最初は売上が伸びなくて、「なんで自分はこんなにカッコいいスタイルを作れるのに売れないんだ?」って思ったこともありました。でも結局、それは自己満足で、お客さまの求めるものを汲み取れてなかったからなんですよね。

お客さまに面と向かって指摘されることもありました。場合によってはケンカ腰になったりすることもありましたよ。自分の「作りたいスタイル」を優先しすぎて、お客さまの要望をちゃんと聞かないこともあったんです。お客さまファーストになれてなかったんですよね。カッコイイ美容師像を勘違いしてたのかな。上手な人って、お客さまが望むものと自分の提案をうまく融合させて、次に繋げる工夫をしている。でも当時の僕は、カッコイイ美容師はカッコ悪い事を沢山してる事に気づいてなかった。
幸運にも優しいお客さまが多かったから、指摘されたり褒められたりしながら少しずつ学んでいった。ここは「場数」を踏むしかないと思っています。

やっちゃダメな失敗もたくさんしてきています。パーマが思ったようにかからなかったり、カラーがイメージと違ったり。ただ、大切なのはそのままお客さまを返さないこと。自分が「あ、これ仕上がり微妙だな」と思ったら、素直に「もう一度やらせてください」と言う勇気が必要です。失敗しないに越したことはないけど、絶対にミスが起こらない保証なんてないからこそ、そこを真摯に謝ってリカバリーする姿勢が「この人は信頼できるな」と思ってもらえるきっかけにもなるんです。やっぱり美容師って、いかにお客さまと向き合うかが大事なんですよ。