「ハサミを置いても、美容は終わらない」笑顔をつくる場所を、経営というステージでデザインするHAVANA group 塩澤宏のびよう道


美容室でも待遇や休日が大切と言われる時代です。もちろんそれも良いですが、美容人生のどこかで“心も体も美容でいっぱい”という時期があっても良いかもしれません。「びよう道(みち)」は、そんな地道で壮大な鍛錬の道を歩んできた“美容の哲人”に、修行時代に一人前になったと思った瞬間や美容の哲学など、それぞれの美容の道を語っていただく連載企画です。

 

100倍を超える入社倍率を潜り抜けて、超人気サロンでキャリアをスタートしたHAVANAgroup(ハバナグループ)代表・塩澤宏(しおざわひろし)さん。厳しい修行時代を経て20代半ばでマネジメントへと転身し、ハサミを置いた後も「美容の本質は人を笑顔にすること」という信念を貫いてきました。現在は「美容×マーケティング×空間デザイン」を軸に、HAVANAグループを率いる経営者として活躍。挑戦を重ねてきたこれまでの歩みと、その根底にある思いを語っていただきました。

 


 

練習出来ない修行時代そこから始まった”人間力”の基礎

 

 

僕が最初に勤めたのは、カリスマ美容師がオーナーを務める有名サロン。後で聞いたら700人の応募の中から、6人しか採用されない狭き門だったそうです。奇跡みたいな話ですが、入社した当時の僕はそんな自覚もなく、頻繁に寝坊して遅刻していました(笑)。

 

そのサロンには独自のルールがあって、1回遅刻すると1週間レッスン禁止。その間に2回目をしてしまうと1カ月、3回目2カ月…これがどんどん積み上がっていく。気づいたら、入社1年目の当時は、7カ月間レッスンが受けられない状態に……! 完全に自業自得ですよね。

 

皆んなが練習している時間に、全員分の朝掃除、営業後も全員分の夜掃除、練習できない悔しさを抱えながら、朝早くから夜中遅くまで先輩の仕事を見ていました。でも、”練習出来ない期間”で学んだことがあります。

 

『可愛がられる=結果的にチャンスがもらえる』

 

何かを教わったら、必ずすぐにやってみる。それがしっくりこなかったら、数日後に「やってみたけど、僕には〇〇です」と良いも悪いも正直に伝える。そうすると先輩も「こいつ、言ったらちゃんとやるな」と、気にかけてくれるようになるんです。先輩の話を聞くだけ聞いてやらない子より、実際やってみてどうだったか話してくれるほうが可愛いがられるじゃないですか。

 

 

こんな感じで、周りにいる人たちと、どうしたらよい関係を築けるのか、楽しく働けるのか、コミュニケーションの仕方をいつも考えていましたね。意識していたのは、「可愛がられる=何でも相談させてもらえる関係であること」。たとえば、普段の会話は敬語だけど、ツッコミだけはタメ口OK。状況は臨機応変にですが、お酒の席で「3杯飲んだらタメ口でもいい」なんていう決まりも自分で作っていました。そのほうが絶対、仲良くなれるから。

 

今でも思うのは、先輩に遠慮して言わないより、ちゃんと本音を伝えた方が信頼されるということ。今こうして人を育てる立場になって、より強く思います。

 

技術より前に、”人としてどうあるか”を学ばせて貰えたのは、この時期だったと思います。

 

 

プレイヤーからマネジメントへーー”チームで成果を作る”面白さ

 

 

7カ月練習をさせてもらえない時期を経て、2年目でこのままではいけないと突然スイッチが入りました。朝から晩までサロンワークして営業後はモデルさんを、週末は7、8人切っていました。アシスタントの立場でありながら、モデルさんの前では僕が一番素敵にできるスタイリストと思いながら、後輩のアシスタントにバイト代を渡して手伝ってもらって、施術していました。休日もほとんど撮影。カットもカラーもメイクも、それなりに全部できるタイプでした。

 

 

スタイリストになってからは外部のヘアーメイクの仕事や、アパレルのモデルの仕事をやったり、傍から見たら順調だったかもしれません。実は僕、美容師がどうしてもしたかったわけじゃないんですよ。

 

理由は簡単。東京で成功したいっていう目標はあったけれど、極端な話、成功できれば、仕事は何でもよかった。

なので、美容師から一度離れた時期もあるんですよね。その後、業務委託で美容師に復帰し、2年くらいで売り上げトップになりました。それでも「美容の道で成功するぞ」と”腹落ちした感覚”は無かった。

 

そんな僕に転機が訪れました。20代半ばで、突然「店をやってみないか?」と言われたんです。

正直、最初はまったく気が進まなかった。というのも、人をまとめるのは大変そうだし、責任が重いじゃないですか。それでもまあ一度やってみるかとやり始めたら、思っていた以上に面白かったんですよね。経営って凄いクリエイティブなんですよ。チームで働いて個人じゃ作れない”大きな成果”をチームでデザインできる。そこから一気にマネジメントにのめり込みました。お店もどんどんプロデュースさせてもらい、そのうち7店舗の代表を任される立場に。毎日が学びの連続でした。

 

 

その中で大事にしていたのが、BBQでよく例えるんですが。肉を焼く人もいれば、野菜を切る人、飲み物を買いに行く人、別々で動いてるじゃないですか!みんな役割は違うけど、

”2時間後に、全員で、楽しく、美味しく、食べる”

っていう目的は同じ。チームってそれと一緒で、誰が偉いとかじゃなくて、目的のためにどの役割で動けるかどうか。

これが本当のチームワークだと思っています。今もその考えは変わらず、よくスタッフにも伝えています。

 

>HAVANA誕生。美容×マーケティング×空間デザインで勝負

 

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