JHAグランプリは、セッションの余韻の中で生まれた。チームで創り続ける、カキモトアームズ 小林知弘のびよう道


美容室でも待遇や休日が大切と言われる時代です。もちろんそれも良いですが、美容人生のどこかで“心も体も美容でいっぱい”という時期があってもよいかもしれません。「びよう道(みち)」は、そんな地道で壮大な鍛錬の道を歩んできた“美容の哲人”に、修行時代に一人前になったと思った瞬間や美容の哲学など、それぞれの美容の道を語っていただく連載企画です。

 

今回登場するのは、カキモトアームズのチーフデザイナー・小林知弘(こばやしともひろ)さん。修業時代の失敗を糧とし、青山の厳しい現場で腕を磨き、チームで創るクリエイションの楽しさに辿り着いた小林さん。

JHAグランプリという結果も、すべては「誰かと一緒につくる時間」を楽しみ続けた、その延長線上にありました。そんな小林さんの「びよう道」をひもときます。

 


 

「できる自分」を証明したかった、修業のはじまり

 

 

僕は美容学校に通っている頃から、地元の美容室でアルバイトをしていたんです。だから、シャンプーやブローも練習していたし、カキモトアームズに入社した時点で「できることは結構ある」という感覚も正直ありました。自分の力を証明したい、アピールしたい。「できる自分」を前に出すことに、一生懸命だったと思います。

 

ただ、サロンワークを続けていく中で失敗も起こります。シャンプーが気持ちよくなかった、とお客さまにクレームをいただくこともある。そういう声をもらったとき、次に来店されるまでの1カ月、2カ月の間に、「次は必ず気持ちよかったと言わせる」と決めて、シャンプーだけでなく、ブローやパーマ、すべてを見直す。今日できなかったことを、次にそのお客さまが来店されるまでにできるようにしておく。それが修業だと思っていました。

 

 

練習のための練習は、あまり意味がないと思っています。本番は、あくまでサロンワーク。お客さまを前にしたときに、いい結果を出すための準備が練習なんです。

 

「気持ちよかった」「いい感じだった」

 

そんな些細な言葉でも、自分の中でちゃんと達成感として積み重ねていけば、モチベーションが大きく下がることはない。そうやって一つひとつクリアしていくうちに、できることの幅が少しずつ広がっていきました。

 

青山で知った“怖さ”が、成長のスイッチを入れた

 

 

僕がカキモトアームズに入社した当時は、まだ自由が丘エリアにしか店舗がありませんでした。入社して4年目のときに、青山出店の話が持ち上がって、自分も異動することになったんです。

 

青山に来た当初は、すでにスタイリストとしてデビューしていました。当時はSNSもなく、新規のお客さまがフリーで来店して、「担当はお任せします」というケースが今よりずっと多かった。

 

でも、青山に立ってみて、自由が丘との違いを強烈に感じました。自由が丘のレベルが低いわけでは、決してありません。ただ、表参道や青山、原宿というエリアに「ヘアカットのために、わざわざ足を運ぶ」お客さまは、求めているもののレベルが、明らかに高かった。

 

正直、最初は怖かったです。気に入らなければ「これは違う」とはっきり言うし、嫌なものは嫌だと伝えてくる。でもその怖さが、「もっと上手くなりたい」「もっと応えられるようになりたい」という気持ちを、確実に強めてくれたと思います。

 

技術を磨くのは当たり前。でも、それだけでは足りない。お客さまが何を求めてここに来ているのか。その期待の一段上を、どうやって返すのか。自分を加速させるためのスイッチが、しっかりと入った気がします。

 

>「突っ込んだデザイン」と向き合うことで、視界が変わった

 

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