JHAグランプリは、セッションの余韻の中で生まれた。チームで創り続ける、カキモトアームズ 小林知弘のびよう道

「突っ込んだデザイン」と向き合うことで、視界が変わった

 

 

青山でのサロンワークに必死に向き合いながら、同時に考えていたのが、「外の仕事にもチャレンジしたい」という気持ちでした。その頃は、ちょうどカリスマ美容師ブーム。サロンにも雑誌の撮影依頼が増え、「雑誌に載るってすごいことなんだな」と、少しずつ実感し始めた時期でした。「JJ」「CanCam」などの赤文字系の一般誌の撮影も多くて、先輩たちが現場に出ていく姿を見ながら、「自分もできる」という気持ちは、正直かなりありました。根拠のない自信も含めて、ですが。

 

ただ、外部の撮影や仕事は、いきなり指名されるわけではありません。多くの場合、まずは会社に依頼が来て、「誰か紹介してください」という形になります。

 

 

だから僕が最初に意識したのは、社内で「この仕事だったら小林にお願いしよう」と思ってもらえる存在になることでした。特別な近道があるわけじゃない。社内のちょっとしたイベントや撮影で、「小林、いいの作るな」「ちゃんと形を残すな」と思ってもらうしかない。結局、やることはシンプルで、とにかく“可愛いものを作る”という一点に集中していました。

 

少しずつチャンスをもらえるようになって、次に意識したのは「先方から小林で」と指名される関係をつくることです。撮影が終わったあとにお礼の手紙を書いたり、編集の方とちゃんとコミュニケーションを取ったり。作品だけでなく、「また一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるかどうかも、同じくらい大事だと思っていました。

 

クリエイション=セッションだと僕は思う

 

 

カキモトアームズはヘアカラーを強みとしてブランド力を高めてきましたが、社内では次第に「もう一歩、デザイン性や突っ込んだ表現が弱いのではないか」という声が上がるようになりました。そこから僕自身も、「突っ込んだデザインとは何か」を本気で考え始めました。

 

僕は作品を作るとき、完成したヘアの写真をほとんど参考にしません。出来上がったものから逆算すると、自分らしさやオリジナリティが生まれにくいと感じるからです。それよりも、「どんな空気感を伝えたいのか」「どんなメッセージを残したいのか」を最初に考えます。

 

卵をモチーフにした小林さん作品

 

たとえば、卵をモチーフにした作品があります。「殻を破る」「新しいものが生まれる」というイメージから卵を連想しました。殻の割れ方は毎回違い、その不確かさが面白い。ゆで卵をたくさん作り、殻を集めて釣り糸で吊るし、飛び散る瞬間を表現して撮影しました。

 

大切なのは、モチーフそのものよりも、その意図をチームで共有すること。「今回はこういうメッセージを伝えたい」と方向性が共有できれば、服装やメイク、写真表現まで自然とアイデアが広がっていく。逆に、なんとなく人の作品をなぞるだけでは、真似に終わってしまいます。

 

チームで創り上げたというJHAグランプリ作品

 

クリエイションは、一人で完結するものではなく、セッションだと思っています。みんなで意見を出し合い、バランスを取りながら形にしていく。そのプロセス自体が最高に楽しく、最後に「いい一枚」が生まれたときの達成感は何ものにも代えがたい。2025年のJHAグランプリ作品も、まさにチームで創り上げた結果でした。

 

 

>「一人前」は、評価された瞬間ではなく“バランスが取れた時”

 

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