JHAグランプリは、セッションの余韻の中で生まれた。チームで創り続ける、カキモトアームズ 小林知弘のびよう道

「一人前」は、評価された瞬間ではなく“バランスが取れた時”

 

 

「いつ、一人前になったと感じましたか?」

 

そう聞かれると、正直、すごく難しい質問だなと思います。何か大きな賞を取った瞬間でもなければ、明確な区切りがあったわけでもない。振り返ってみて、「あ、あの頃から少し変わったな」と思えるタイミングがあった、という感覚に近いです。

 

若い頃は、とにかく「技術が上手ければお客さまは来てくれる」と思っていました。自分はどちらかというと、技術寄りの人間だと思っていたし、カットさえ上手くなれば評価されると信じていた。でも実際は、そう単純じゃなかったんですよね。

 

技術だけじゃなく、コミュニケーション。お客さまとどう向き合うか、どう話すか。

清潔感のある見た目や、距離感の取り方。そして、もちろん絶対的な技術力。

 

 

そういったものが、少しずつ噛み合ってきたときに、自然とお客さまが増えて、売上も伸びていきました。でも、売上自体よりも、「ちゃんとお客さまが評価してくれている」と実感できたことのほうが、自分にとっては大きな自信につながりました。

 

続けた先にしか、見えない景色がある

 

 

どのようなカタチであれ、美容師をやり続けていれば、必ず人との出会いが生まれて、その人たちが次のステージへ導いてくれます。僕がここまで続けてこられたのは、単純に作ることが楽しかったからです。結果を求めすぎると、心が折れてしまうこともある。でも、誰かと一緒にセッションしながらものを作る時間が楽しいから、「もう一度挑戦しよう」と思える。結果は、あとからついてくればいい。大事なのは、やり続けること。

 

 

もし今、くすぶっている若い美容師がいるなら、僕はこう伝えたいです。続けた先にしか、見えない景色がある。美容師は、そういう景色を見られる仕事だと。

 

プロフィール
小林 知弘(こばやし・ともひろ)
kakimoto arms/Chief Designer

1976年生まれ、神奈川県出身。美容学校在学中から地元美容室でアルバイトを経験し、サロンワークの基礎を学ぶ。その後、kakimoto armsに入社。自由が丘エリアでの修業を経て、青山店オープンのタイミングで異動。サロンワークと並行し、一般誌・美容業界誌の撮影、ヘアショー、セミナーなど幅広く活動する。Japan Hairdressing Award(JHA)では、長年に渡り挑戦を重ね、2025年グランプリを受賞。現在はチーフデザイナーとしてサロンワークの第一線に立ちながら、次世代の育成やクリエイションの継承にも力を注いでいる。
Instagram:@koba5122

 

(文/外山武史  撮影/菊池麻美)

 

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