見掛け倒しのフェイクはいらない。リアルな技術だけを残したい。 MR.BROTHERS CUT CLUB 西森友弥のびよう道

技術がない職人なんてフェイクでしかない

 

 

東京で勝負すると決めた以上、甘い環境に浸かるつもりはなかったし、むしろ一番厳しそうな場所に身を置きたかった。そういう意味で、原宿の店はいい環境でした。やっていたことはシンプルです。とにかく練習。朝も夜も、空いてる時間があればハサミを持ってた。遊びまくってましたけれど、技術だけは譲れなかった。そこをサボる職人なんて、職人じゃないから。

 

なんで技術を大切にしていたのかというと、「お客さまを満足させることが本質」だと信じているから。お客さんを喜ばせるために、中途半端な仕事なんてできないじゃないですか。僕は生意気だったんで、先輩とぶつかることもありました。でも、先輩の機嫌を取って、目の前のお客さまの満足度が下がるくらいなら、怒られてもいいと思ってた。職人は技術で評価される世界だし、そこは若い頃から一切ブレなかったですね。

 

どの世界も同じだと思うんですよね。「こんくらいでいいか」って妥協する宮大工なんていないでしょ。きっとプロ野球選手だってそうじゃないですか。素行が悪くても、スタメンに名を連ねるのは上手い選手だけだから。

 

 

原宿で働きながら、だんだん美容業界そのものに違和感を持つようになりました。クーポンで技術を値引きして、数を回して、技術の価値がどんどん軽くなっていく。職人の仕事なのに、扱いは作業みたいになっていく。その空気が、どうしても受け入れられなかった。一度は本気で、この業界を離れようかなと思ったこともあります。職人が技術を安売りしてどうするんだ、って。そこそこの仕事、そこそこの値段でやってていいわけじゃない。美容業界に愛想をつかしていたんですよね。

 

BARBERの世界で出会った「本物の職人」

 

 

そんなときに出会ったのが、BARBERの世界でした。衝撃的だったのが、旭川にあるBarbershop APACHEの川上昌博さんとの出会い。技術はもちろんなんですけど、それ以上に、仕事に対する姿勢が圧倒的だった。道具の扱い方、立ち振る舞い、空気感。全部に意味があって、「ああ、これが職人だな」って思わされたんです。自然と意気投合しました。

 

さらに決定的だったのが、HAWLEYWOOD’S BARBER SHOPのオーナー、ドニー(Donnie Hawley氏)との出会いでした。ドニーは、ドライヤーとバリカンのタトゥーを体に刻んでいる。それは単なる装飾ではなく、職人としての誇りを自らの生き方ごと背負っている証なんです。そんな海外のバーバーが持っているプライドやカルチャーを間近で見て、もう一度ちゃんと情熱を持てた。日本だけを見てたら分からなかった景色が、そこにはあったんです。

 

 

オランダのSCHOREM(シュコーラム)をはじめ、海外のバーバーたちの動画も、YouTubeやSNSでひたすら見ました。日本にはメンズカットの教科書がなかったから、動画を止めて、巻き戻して、真似して、また考える。僕の技術は、ほとんど独学だったんです。

 

流行らせたかったわけじゃない。基準を下げなかっただけ

 

 

僕らが立ち上げたMR.BROTHERS CUT CLUBが広がっていった理由って、正直シンプルだと思ってます。どの店に行っても、誰に切ってもらっても、間違いない技術がある。その基準を、絶対に下げなかった。それだけです。紹介で来たお客さんに「誰でも大丈夫ですよ」って胸を張って言える。その自信があったし、そこに嘘はなかった。

 

でも、店が評価されて人が集まるようになっても、「これで終わり」だとは全然思わなかった。自分たちだけがうまくなっても、業界は変わらない。基準を共有しなければ、また薄まっていく。だったら次にやるべきは何か。答えは自然と、教育でした。だから、カットの教科書をつくりました。プロ向けに技術の理論を説明するためのものがなかったから。

 

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