びよう道 vol.14  Cocoon VANさん 〜美容師を天職だと思ったことはないし、自分がヘタクソだってことを片時も忘れたことはない〜

2020.03.06

 

美容室でも待遇や休日が大切と言われる時代。もちろんそれも大切ですが、美容人生のどこかで“心も体も美容でいっぱい”という時期があってもよいかもしれません。

 

「びよう道(みち)」は、そんな地道で壮大な鍛錬の道を歩んできた“美容の哲人”に、修業時代に一人前になったと思った瞬間や美容の哲学など、それぞれの美容の道を語っていただく連載企画です。

 

第14回目は、Cocoon代表、VANさんのインタビューです。ヘアコンテストの審査員をつとめるなど、美容業界から一目置かれる存在ですが、ご本人は「美容師が向いていると思ったことがない」のだとか。まずはVANさんが「美容師として一人前になったと思った瞬間」から聞いてみました。

 


 

美容師として一人前かどうかは、自分で決めることじゃない

 

 

これは謙遜じゃなくて、本当に自分が一人前になったと思ったことないんですよ。美容師が自分の天職だと思ったこともない。自分の天職だと感じられるようになりたいとは思うけれど。

 

そもそもカットが上手いとか、一人前とかっていうのは、自分で決めることじゃなく、人が勝手に言うことだから。お客さまが増えて売上も増えるとか、お客さまにリピートしてもらうとか、そういううれしいことはあるけれど、だからといって「自分は美容師に向いている」と思ったことは本当にないですね。

 

「仕事をそつなくこなせる」とか「ヘアサロンのオーナーだから」とか、そういうところだけで見て一人前だっていうのは、僕は違うと思う。たとえば、売上の数字には、いろいろな付加価値が入っています。

 

表参道というブランドもあるし、サロンの名前も含まれているかもしれない。つまり、売上っていうのはイチ美容師の実力だけじゃないから、数字だけを鵜呑みにしないほうがいいよね。もちろん、売上は大事だし、売上がたつっていうのは、求められている証拠ではある。それはいいことだと思う。ただ、そこには美容師の能力だけじゃなく、ヘアサロンの営業能力やプロデュース能力とか、実質以外の周りの“音”的な部分が含まれていることを忘れちゃいけないと思うんです。

 

ちょっとひねくれた考えに感じるかもしれないけれど、テレビに出ているから、雑誌に出ているからとか、そういうことで評価する人たちが多いと思う。それを真に受けるほど、僕はアホじゃないというか。。(笑)

 

それに、僕はまだカットが上手くなっているんですよ。3年前より俄然、上手くなっている! カットの手数が減ってよりシンプルになったし、カットを一発で決めるという自信もついてきた。むしろ、自分が上手くなっていると感じられなくなったら、美容師を続けられなくなるのかな、とさえ思っています。

 

4年半の伸び悩みを経て辿り着いた「分岐点」

 

 

まだ一人前になったと思っていないけど、ある時を境に、仕事に対する考え方が劇的に変わったという経験はしたことがあります。それは、デビュー後しばらくしてから4年半まったく売上が伸びなかった時代のこと。スタイリストデビューして最初の1年はバババッと売上が増えたのに、そこからピタッと止まり、少しずつ下がっていった。

 

2回目、3回目、4回目…5回目までリピートしてくれたけど、6回目からこなくなるとか、そういうことが続いていました。で、4年半程試行錯誤してるうちにスコンとハラオチする瞬間があったんだよね。それまではやっぱり「自分ありき」の発想でやっていたんです。「これがオシャレじゃないか」「これがかわいいいんじゃないか」って自分が発想することがデザインだと思っていた。その自分よがりが原因で、少しずつお客さまが離れていったと思うんだよね。

 

それからは自分よがりの発想から、相手ありきの発想に変わったんです。もちろんそれは「お客さまの言いなりにやる」とか「媚びる」という意味ではなく、「この髪の毛、この骨格から何ができるかな」って考えるようになったということ。考えるときのスタートラインが根本的に変わったってことですね。

 

伸び悩んでいたころは、素材に関係なく、自分の目指すカタチを作ろうとしていたということ。それまでは「髪だけ」を触っていたけれど、はじめて「人」に触るようになったと言えるかもしれない。そこが仕事の分岐点になりました。

 

それから長年通い続けてくれるお客さまが増えました。お客さまが続けてきてくれるかどうかっていうのは、「その人じゃなきゃダメ」っていうことだと思う。昔、師匠にこう言ってもらったことがあります。「20年続けてきてくれてこそ、その人にとっての一人前だ」と。その人にとって自分は信頼するブランドになれているということ。流行りのデザインやカラーを提供しているからとか、売上があるから、SNSで話題になっているから、有名だからブランドっていうわけじゃないんですよね。

 

 

>二人の師匠から言われた、一字一句違わぬダメ出しの言葉

 

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