二十歳の頃、どう過ごしてた? COA小西恭平さんの二十歳の頃。
─そこから、気持ちが変わったきっかけがあったのでしょうか?
所属店舗が決まったことですね。僕は人に心を開くのに時間がかかるタイプなのですが、店舗が決まって同じメンバーと毎日働くうちに、先輩方の良いところが見えてきたんですよね。そこでお世話になった先輩方のおかげで変われたと思います。

気持ちが変わってからは、朝は僕が最初に鍵を開けて練習して、営業後も練習して、最後に自分が鍵を閉めるというルーティーンを作りました。ハードでしたが、1年目の頃から「デビューして売れなかったら嫌だ」という焦りがありましたし、ここで逃げても、いい人生が送れないな、という覚悟みたいなものもあったと思います。
ただ、今はカラーやパーマなど他の技術もすごく好きですが、当時の僕はまだカット以外に楽しさを見つけられなくて…。カリキュラムを進める他に、自分で出来る時間を見つけてはカットの練習をしていました。営業後はレッスンがあり、休日も朝と夜はみんなで練習する風習がありましたが、休日の昼から夜までは自由な時間ができるんですよ。ウィッグを買うお金もなかったから、街で声をかけてモデルさんを呼んで、先輩にカットを見てもらうようになりました。
─本当にカットがお好きだったんですね…! カリキュラムを進めるモチベーションの中には、早くカットに入りたいという気持ちもあったのでしょうか?
そうですね。モデル入客ばかりやっていてカリキュラムの進みがイマイチだったときに、先輩から「このカリキュラム終わらないとモデル禁止にするよ」と言われたことに焦って、一気に終わらせました。誰よりも練習して、先輩にたくさん見てもらっていたら上手くもなるし、先輩も合格させざるを得ないじゃないですか。それまでカットの練習をしていた時間も全部カリキュラムを進めることに充てたので、あっという間に同期を抜かしましたね。モチベーションはまさにカットへの熱意でした。
─カリキュラムに合格してからは、ついに念願のカットに入ったんですか?
はい、ようやく。その頃はカットに2時間の枠を押さえていたので、朝9時から夜12時とかまでみっちり2時間ごとにモデルカットのスケジュールを詰めて、先輩から「もう帰りなよ!」と言われながら、ひたすら切っていました。なので、前社での僕の印象も学生時代と同様「ひたすらカットしてるやつ」だと思います。でも僕自身は、すごく楽しかったんですよ。
むしろ、なんでみんなはやらないんだろう?と思っていましたね。友達とわいわいするのも楽しいとは思うけど、僕は自分がどうして美容師になったのかっていうところに重きを置いていたし、周りとの熱量の差にもやもやしてしまう。だから同期とはあまり関わっていなかったです。好かれる人には好かれるけど、それ以外の人からはあまりよく思われてないタイプだったと思います。
二十歳のみんなへ

一番大事にしてほしいのは、楽しむことですね。全部をやろうとせずに、まずは自分が楽しいと思えることを見つけてください。それを見つけるのに時間がかかっても良いと思うんですよ。すぐに見つかるものってすぐに飽きてしまったりするけど、時間をかけて見つけたものは長く続けられるというのが僕の持論です。
僕自身、カットっていうのは、長い時間をかけてようやく見つけた好きなものなんですよ。というのも、実は僕は小学生の頃から人の髪を切ってたんですよね。本当は自分で自分を切りたかったけど、さすがにそれは難しいので、友達を家に呼んで、ベランダで切っていました。生きてきた中で、いつの間にかカットするのが当たり前になっていた感じだったんです。
付け焼刃ですぐに結果を出す必要はなくて、しっかり時間をかけて、結果が出せるようになれば大丈夫。焦らずに、まずは一日、一日を楽しみながら頑張って欲しいですね。
(文/リクエストQJ編集部 撮影/菊池麻美)
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