二十歳の頃、どう過ごしてた? orente 表参道 by rcid 大野道寛さんの二十歳の頃。

─当時、大きな失敗やつまずいた経験はありましたか?

 

記憶に残っているのは、ディレクターのお客さまのカラーを任されるけど上手くいかない、でもまた任される…というループを繰り返していた時です。そのディレクターとお客さまの関係は何十年と続いているので、アシスタントが少しくらい失敗してもお客さまは怒らないんですよ。難しい髪質の方だったので、ディレクター自身も「この子には出来ない」と分かった上で、チャレンジさせていたのだと思います。カラーが終わるとお客さまは怪訝な顔をしていて、地獄のようでした。

 

─繰り返すうちに、少しずつ出来るようになっていったのでしょうか?

 

そうですね。ライオンが子供を崖に突き落とすような教育方針というか。僕はなんとか這い上がれましたが、それで辞めた同期もいました。何度失敗しても、ディレクターは何も言わないんですよ。怒られる訳ではなく、自分で考えなさい、と。

 

 

「なんで怒らないんだろう」と思っていましたが、今思うと結局それが正しいんですよね。というのも、入客するときには、セット面にお客さまと自分だけの空間。隣で「カラー剤はこれだよ」なんて耳打ちしてくれる人はいません。だから、その場で必死に考えて、自分の引き出しの中身、知識で対応していかないといけない。そういう力を身に付けてもらったのだと思います。

失客させてしまったこともありましたが「私も一人じゃ出来ないし、美容師ってそういうものだから」というスタンスで、そのことについても怒られませんでした。今、自分がその立場になってみて改めてその凄さが分かりますね。

 

二十歳のみんなへ

 

 

社会に出て、大人になること、夢を叶えることはすごく難しいです。簡単に叶わないから『夢』ですしね。でも美容師というのは、叶った暁に他の仕事では得られない楽しさや喜びがある仕事だと思っています。

何も持っていない、何の変哲もない二十歳の普通の男の子だった自分が、努力を積み上げることによって、人から「あなたじゃなきゃだめ」と言ってもらうことができる。お客さまの人生で一番の人になれる。そういう人に囲まれ、求めていただくことができるようになる仕事が、美容師なんです。そこには何にも代えられない喜びがありますし、好きなことで生きていく辛さもあるけど、自分の人生を自分の行きたい方向に舵切りできるんですよ。

特に今は、SNSが出来たことで仕事の幅も広がっています。昔は売れっ子=雑誌に載って予約がパンパン、というイメージでしたが、今はもっとたくさんの可能性がある。それが、今の時代の良いところですよね。

 

一つアドバイスをするなら、もう少し視野を狭めてもいいのかなと思います。調べたら何でも出てくるし、SNSを開けば調べなくても自分の好きなものをレコメンドしてくれる時代だから、みんな、見てるところが広すぎるんですよ。色々なものを見てはいるけど、実際に見えているのは表面の一掬いだけ。本当は、もっと狭くていいから、深く物事を捉えたり、考えたりしてほしいなと思います。

SNSで周りが見える分、悩んでしまう子も多いと聞きますし、当然ですが一長一短ですよね。隣の芝生が、青どころか黄金に輝いて見える。でもそっちに行ってみたら意外と大したことなかったりするんですよ。嫌な奴はどこにでもいるし、嫌なこともどこにでもある。結局は自分なんですよね。どんなサロンに入るかももちろん大事ですけど、その場所でどれだけやるかを大事にしてほしいなと思います。

 

(文/リクエストQJ編集部 撮影/松林真幸 MIKAN inc.)

 

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