二十歳の頃、どう過ごしてた? GOALD 佐藤拓弥さんの二十歳の頃。
─器用な佐藤さんにも、つまずいた経験や、今でも覚えているような失敗はありましたか?
あまり怒られるタイプじゃなかったけど、ありますよ。1年目でパーマの工程を任された時に、本来なら2剤をつけるタイミングで、もう一度1剤をつけたことがあります。指示を受けた時に薬剤のメーカーだけ言われたので、そのメーカーの表示しか見てなくて、いざ使ったらどっちも1剤だったっていう…。周りの先輩が見ていて、すぐに気づいて洗い流したので仕上がり的に大失敗にはならなかったですけど、工程としては大失敗。

でもそのとき、先輩からめちゃくちゃ怒られた記憶はあんまりないんですよ。もちろん怒られたけど、それよりも覚えているのは、先輩がお客さまに対してすごく申し訳なさそうにしていたこと。仕上がりがなんとかなったとしても、お客さまの髪は傷むし、二度手間になって時間もかかってしまうわけじゃないですか。
そのことに対して先輩が落ち込んでいる様子を見て、先輩もお客さまも悲しませてしまったなと、僕もすごく申し訳ない気持ちになったんですよね。反省の気持ちを表すために、原稿用紙3枚分くらいの反省文を提出した気がします。
─今ではメンズパーマの第一人者とも言える佐藤さんにも、そんな経験が…。逆に、メンズヘアに興味が湧いたのはどのタイミングだったんでしょうか?
アシスタント3年目の頃ですね。きっかけはいくつかあって、自分とは真逆の爽やかなビジュアルの先輩がすごく売れてて、こういう人が人気になるんだな…と思ったり(笑)、メンズヘアの雑誌撮影に同行したときに「めっちゃかっこいいな」と感じてワクワクしたり。そういうことが重なったタイミングでふと思い返してみたら、自分が最初に憧れたのは、ファッション誌のCHOKiCHOKiに載っていたメンズのスタイルだったと気づいたんです。
僕の学生時代にはメンズサロンなんてほぼなかったし、美容師=女性の髪を切るっていうのが当たり前だったから、自然と自分もレディースをやるものだと思っていたんですけど、自分が美容師を志したきっかけはメンズのスタイルだったんですよね。
そこから、独学でメンズカットを学ぶようになりました。前社は8割以上が女性のお客さまでしたが、僕がついていたスタイリストは4割くらいが男性のお客さまだったので、間近で色々見られたこともありがたかったですね。

─今振り返って、あの頃もっとこうしておけば良かったと思うことはありますか?
色々考えたけど、今こういう環境で、この仕事をしていることに一切後悔がないので、結果的に全部よかったのかなと思います。点で見たら、「こうしておけば」っていう瞬間はもちろんたくさんあると思う。でも、それも全部理由があって、その点があったから次はこの選択ができて…と全てがつながっていると思うんですよ。なので、後悔していることはほとんどないです。
─最初から、メンズが多いサロンに行けばよかったとは思わないですか?
そう思ったタイミングもありましたけど、今思えば最初のサロンを選んだことも良かったと思ってます。最初からメンズサロンに入ったら、レディースの技術はもちろん学べないじゃないですか。レディースのカリキュラムをスタイリストデビューできるレベルまで学んだ上で、今メンズをやれているのは利点かなと思いますね。当然、メンズだけを学んでスタイリストになるよりも時間はかかりましたけど、やって良かったと思っています。
二十歳のみんなへ

アシスタント時代はやらなきゃいけないことも多いし、給料も低いし、大変なことがいっぱいある。だから、早くスタイリストになりたいとか、早く売上を上げたいってところに目を向けがちですよね。その気持ちも大切だけど、僕は、必ずしもアシスタント期間を短くすることが正解だとは思わないんです。
というのも、他の人の技術を近くで見て、触れて、学ぶのって、スタイリストになったらほぼできないことだから。それは技術の面に限った話ではなくて、アシスタントだからこそ、先輩がもらった大きい撮影の現場に入れたり、携わらせてもらえることもありますよね。
逆に、スタイリストになったら自分でその仕事を掴まないといけないので、次にその規模の仕事に携われるのはいつになるか分からない。そう考えると、アシスタントとして過ごす2年、3年ってすごく貴重だし、早くスタイリストになることだけがベストなわけじゃないと思うんですよ。

僕は同期の中ではデビューが早い方でしたけど、それでもスタイリストになるまでは5年かかりました。長いと思うかもしれないけど、この先何十年も続けていくスタイリストとしての期間と比べたら、たった5年だけ。二度と経験できない時間で、その5年間はすごく大事な時間だったと思っています。
自分で思っているよりも、アシスタント時代にしかないチャンスがたくさんあります。色々な現場に行ったり、色々な技術を見られる唯一の時間として、ポジティブに捉えて頑張ってほしいですね。
★Extra Contents
お金がないアシスタント時代、よく食べていたものは…?

(文/リクエストQJ編集部 撮影/松林真幸 MIKAN inc)
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