輝く美容師の裏側にフォーカス あの人の「裏ガオ」−第二回L.O.G SHIBUYA 代表 長山ゆうきさん

『一本の芯』がないと本物の美容師にはなれない、L.O.Gでようやく入ったやる気スイッチ

 

 

L.O.Gに入ってからは、それまで90万円あった売上が10万になったんですよ。「やっぱりな」って感じでした。だって、頑張ってなかったから。練習もしてなかったし、努力もしていなかった。

 

給料もアシスタント1年目くらいの金額に戻ってしまい、前の店で店長になったときの給料で住む部屋も決めていたので、そこからは本当に苦労しましたね。生活のために、友達に楽でお金がいいバイトを紹介してもらったりもしたけど、どれもぱっとしないし、結局苦労しないと、お金って稼げない。

 

美容師だって同じですよね。『一本の芯』を持たないと、本物の美容師にはなれないんだってようやく気づいて、そこからは美容師のことしか考えないようにしました。

 

 

幸いなことに、友達は多かったので、20~30人の仲間に一人ずつ頭を下げて「店に来てください」ってお願いしました。今は、集客はSNSや予約サイトに頼るところが大きいけれど、面と向かってお店に来てもらうことが大切だし、それで来てくれた人のために技術を磨いてくのが美容師の本質なんだって思いました。

 

もちろん、そのころには練習もするようになりました。表参道の美容室で改めて技術を教わると、毎日が衝撃の連続なんですよ。「こういう風にするんだ!」ってわかって。そこからは、スタイリストになってからもずっと練習の日々です。

 

バイトも辞めて、美容師一本の生活を28歳くらいまで続けていたのですが、足りない生活費はクレジットカード頼み。限度額に達したら、地元に強制送還…という危機感が常にありました。生活できないし、親にも頼れないですから。

 

あと少しで限度額に達してしまうというギリギリのときに、転機が訪れたんです。そのころにはすでにインスタグラムが流行っていて、友達が紹介してくれた男の子が、インフルエンサーだったんです。タイムリミットまで2か月を切ったときに、その子がサロンに来てくれたんです。

 

それまでのお客さんはギャルが多かったのですが、その子は男の子から圧倒的に支持されていたので、インスタに載ったあとは、メンズのお客さんが増えたんです。僕は、タトゥーも入っていますし、髭も生やしている。見た目的にも女性より男性をメインターゲットにした方が合っているかもと思ったんです。そこで、さっき言った『一本の芯』をメンズに特化するということに決めました。

 

 

そこからはメンズのスタイル、カラーを研究しましたね。当時はインスタでメンズのスタイルを載せている人はあまりいなくて。おしゃれだとか、スタイルがいいとか関係なく、普通のお客さんの写真をどんどんアップするようにしたんです。

 

目指したのは、僕のインスタが、男性のヘアカタになればいいな、ということ。男性って、雑誌のヘアカタを買う機会が少ないけど、スマホならみんな持っていますよね。美容院に行く途中で、自分好みのヘアスタイルを探せたらいいと思ったんです。

 

例えば、野球部をやめて坊主をなんとかかっこよくしたいっていう子とかも来てくれます。高校生は校則もあるし、できることも限られてくるけど、それでもここに来てくれるということは、かっこよさを求めてのこと。だから、最大限かっこよくしてあげたい。そんなメンズのスタイルを1枚1枚上げていったら、もう一段階、人気に火が付いたんですよ。「こういう人たちも来るんだ」っていう親近感を感じてもらえたんだと思います。

 

売上が伸びていくと、難しい注文も増えてきます。それも試練なんだと思って丁寧に対応するように心がけていましたね。そうしているうちに、売上は社内で5番以内に入るくらいまで伸びました。

 

来てくれるお客さんに、持っている技術の最大限を生かして応えたい。

 

美容師になった理由も、東京で美容師をやっている理由もってこれなんだなって、時間はかかりましたけど、ようやくこのときに気づきましたね。

 

 

美容学生やアシスタントさんの中には、僕と同じように「なんとなく美容師になった」という人も中にはいるかと思います。流されたりサボったりすることもあると思うけど、ここぞという努力すべきポイントを探してほしいと思います。だって、自分がお客さんなら、かっこいいと思う人に髪を切ってもらいたいですよね。それなら、努力をして自分がかっこいい人にならないと。

 

僕の場合は、25歳で美容師という職業に本気になるまでは遊んでばかりでしたが、窮地に陥ったときに助けてくれたのもまた、遊んでいた仲間や人脈だったんです。当時はあまり意識することはなかったけど、美容師という人を相手にした仕事をする上では、たくさんの人に好かれる人になるというのも大切なんだと思います。

 

プロフィール
L.O.G SHIBUYA/代表
長山ゆうき (ながやま ゆうき)

足利ビューティ・デザイン専門学校卒業。都内のヘアサロンでアシスタントを経て、U-REALMに入社し。L.O.Gのオープニングスタッフとなる。メンズカットで注目を集め、L.O.G SHIBUYAの代表に抜擢。メンズのファッション雑誌のヘアカタログや、ファッションショーのヘアメイクの仕事も多数。

 

(取材・文/須川奈津江  撮影/菊池 麻美)

 

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