「苦しそうでも、ワクワクする方へ」MUKU石原萌さんが歩んできた10年と、これからの指針 ─天職WOMAN─
店舗異動で売上の立て直し……でも、何より顧客さまの大切さを実感
デビューから1年以上経って自分のやりたいスタイルを打ち出すことになったわけですが、当時の集客はまだInstagramではなくもっぱら集客サイトとブログ。とにかく地道に続けていましたね。ブログは、コメントの返信はできるかぎり丁寧に自分らしくしようと決めていて、それを読んで「返信が丁寧だったので」と来店してくれるお客さまがいらっしゃったことが本当に嬉しかったのを覚えています。
その後は、時代の流れに乗ってSNS集客に少しずつ移行していきました。ただ、安定してお客さまを呼べるようになるまでは苦労したタイプだと思いますし、今でもあの頃を思い出すとちょっと苦しいです（笑）。
と、言うのも私は、スタイリストになってから3回店舗を異動しているんですよね。店舗が変わると、少なからず売上は落ちてしまうので、また立て直しをしなければなりません。特に、3回目で銀座から表参道の店舗に移動したときは苦労しましたね。それでも、さらに上を目指して試行錯誤していく大変さ以上に、学びや新しい発見がたくさんある毎日でした。
それに加えて何より辛かったのは、売上が下がることよりも、それまで来てくださっていたお客さまに会えなくなること。私はお客さまが大好きだし、感謝を伝えられるのもやっぱりお店に来てくださるからこそ。今でも「最近顔を見ていないな」というお客さまがいる時には、Instagramを通して「また行きたいな」と思ってもらえるように、顧客さま向けの投稿やストーリーを発信することはすごく心掛けていますね。
状況が上向いたきっかけは、前社のエリアマネージャーが「これをしなさい」ときっぱりアドバイスをくれたことでした。当時はInstagramの投稿に文字を入れるのがトレンドだったのですが、私はそれが自分のスタイルの雰囲気と合わない気がしてすごく嫌だったんですよ。でも「やった方がいい」と助言していただいて、思い切って始めてみることにしました。自分らしさを出すために手書きで文字入れをすることに決めたのですが、地道に投稿を続けていくと、少しずつ反応が増えてきて。気づけばフォロワーが1万人ほど増えたんです。やっぱり何事もやらずに判断するのではなく、やってみてから「より良くするにはどうしたらいいのか」と工夫していくことが大切だと改めて実感できた瞬間でもありました。
売上より大切なもの──新天地「MUKU」でお客さまや後輩と向き合いたい
2024年に10年在籍した前社を離れ、新たに立ち上がる「MUKU」に参加しました。美容師として、女性としてのこれからのライフスタイルを考えている中で、佐脇（正徳）とyokoが所属していたサロンから独立してMUKUを立ち上げることを知り、「この方たちと働いてみたい」と直感で思ったんです。
会社を変えることは自分にとって初めての挑戦で、怖さや不安、色々な感情がありました。でも、私はいつも「苦しそうでも、ワクワクする方を選ぶ」と決めていて。いつか動くなら今が1番早いし、挑戦してみたいと思った自分を信じて一歩踏み出したいと思ったんです。この変化を良くするのも悪くするのも自分自身。だからこそ、自分の選択を正解にするためにこれからも挑戦は続けていきたいと思っています。
今の私の目標は、「MUKUを毎日満席にすること」。それは単なる数字を追い求めるという意味ではなく、新しいお客さまとの出会いを意味します。そしてもうひとつ大切にしているのが、後輩たちのサポートです。MUKUでは、デビュー間近のアシスタントにとって、一番近い先輩が私なので、責任を持って向き合っていきたいと考えています。
自分が売上を上げるまで本当に苦しかったからこそ、後輩にはその時間を少しでも短くしてあげたい。たとえば、一緒にSNS戦略を考えたり、悩んだ時はごはんに行ったり。そういう“近くにいる先輩”でいたいなと思っています。
今はまだMUKUがオープンしたばかりで少しバタバタしていますが、新しくできた仲間と充実した毎日を送っています。仕事の面でも確実に前に進んでいきながら、これからは1人の女性としてプライベートの時間や経験も惜しみなく楽しんでいきたいですね。
- プロフィール
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MUKU／トップスタイリスト
石原 萌
兵庫県出身。神戸ベルェベル美容専門学校卒業後、都内有名サロンに入社。ニュアンスのある“大人かわいい”ボブスタイルに定評があり、カミカリスマ一つ星を2年連続で獲得。2024年10月からは、「MUKU」のオープニングメンバーに。顧客との出会いを大切にしながら、後進の指導にあたっている。
Instagram：＠moe.hair_muku
（文／須川奈津江 撮影／菊池麻美）
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