“私は天才じゃない”から、誰よりも練習する以外に道はなかった。ブランドサロンでキャリアを築く、HEAVENS・NAEさん ─天職WOMAN─
視点が変わって気づいた、教育の難しさ

実は私、アシスタントの頃から、先輩に対しても忖度せず意見をぶつけてきたタイプだったんです。
先輩の言葉が厳しくて悩んでいる後輩がいたら、「ちょっと、その言い方だけ変えられませんか?」と直談判したり、レッスンのカリキュラムを全て終えてからは「ここって本当に必要でしたか?」と言ってみたり…。先輩方からしたら生意気な後輩だったと思うし、今思えば本当に申し訳ない(苦笑)。
もちろん全てを聞き入れてもらった訳じゃないですが、頭ごなしに否定されたことはなくて。1回、2回で口を出すことを諦めなかったのは、なんだかんだ話を聞いてくれる先輩がいたからだと思うんですよね。その点については先輩方にすごく感謝していますし、この立場になって、改めて尊敬している点でもあります。

その経験もあって、店長になってからは、スタッフ全員の話を聞くように心掛けています。一旦全て話を聞いた上で、受け入れたり、怒ったり、寄り添うのが私のスタイル。言葉を選ばずに言えば、「なに甘いこと言ってるの?」と思うときと(笑)、「確かにそれは変えていった方がいいね」と思うときと、半々くらいですね。後輩には厳しく指導することもありますが、それでもこのサロンに居たいと思ってもらえるくらい、厳しさ以上の愛情を注いでいるつもりです。
そして、店長になってから何より痛感したのは、教育の難しさ。私は暑苦しい熱血タイプなので、金八先生みたいになりがちなんですよね。「みんなが匙を投げているけど、私ならこの子を変えてあげられるかも」と、思ってしまうというか…。

でも、実際には自分のキャパってそんなになくて、全員に一から十まで寄り添い、掬い上げるのは難しい。必然的に、やる気がある子や、素直で伸びそうな子を見極めて注力した方が、サロン全体のクオリティが保たれるんですよ。その難しさや葛藤は常に抱えています。
幹部のミーティングに出るようになってから、「冷たいな」と思っていた先輩が実は一番後輩のことを考えていたと気づけたこともありましたし、良くも悪くも、簡単じゃないなと感じます。
SNSがバズったときが、一番不安だった

振り返ると、私のターニングポイントは、デビュー前にSNSがバズったときだったと思います。そのときが、今までで一番不安だったんです(笑)。
お客さまたちが「ずっと髪の毛やってもらいたかったんです!」と目を輝かせていらしてくれたとき、嬉しさよりも「私は、そんなにすごい人じゃないのに…」という気持ちが強くて。お客さまに選ばれる人になりたくて頑張ってきたはずなのに、いざ、すごい先輩たちがたくさんいる中で自分が選ばれたら、不安や怖さがグッと押し寄せてきました。それまでは、デビュー目前だし、ようやくガムシャラに努力する期間が終わると思っていたんです。でも違いました。むしろ、ここからが本当のスタートだと気づいたんです。
お客さまの髪を扱うっていうのは、生半可な気持ちで出来る仕事じゃない。上の人たちに同じようなことを言われていたし、頭では分かっていたはずなのに、腑に落ちたのはその時だったんですよね。美容師にとって一番大切なことを、目の前のお客さまに教えてもらったと思っています。

そして、私に仕事の楽しさを教えてくれたのもお客さまでした。スタイリストになって5年経ちましたが、最近は顧客で予約が埋まることがほとんど。
みんな、「やっほー」ってお店に来て、終わったら「今日もマジで最高!ありがとう、じゃあまたね」って帰っていくんですよ。お客さまは友達じゃないけど、友達よりもコンスタントに会っている存在じゃないですか。会えると嬉しいし、話すのも楽しくて。
新しいヘアを提案したときも、信頼してくれているからこそ「じゃあそれにする」とすぐに賛成してくれるし、ヘアチェックもびっくりするほどスムーズです。デビューしてからの5年間、クレームは1件もないし、本当にありがたい気持ちでいっぱいですね。
仕事を楽しいと思えているのは、100%お客さまのおかげ。これからも私を選んでもらえるように、常に研鑽を積んで、新しい引き出しを増やしていかないとな、と常々思っています。

今後のことを考えたときに、一番大切にしたいのはサロンワークです。業界誌の撮影は、サロンのブランディングを守るためにも続けようと思っていますし、クリエイティブやコンテストは、それによってお客さまが「やっぱり、信頼できる人なんだ」と喜んでくれるならやってもいいかなと。逆に「あんまり興味ないよ」って言うなら、一切やらなくてもいいかなと思うくらい、私の軸はサロンワークにあります。
それでも、これまで毎年コンテストに参加してきたことで得られたものは本当に大きかったですね。SNSで反響があったのもコンテストの写真でしたし、いつもと違うクリエイティブなスタイルに取り組むことは、私にとって大きな挑戦でした。失敗して知識を身に付けたり、新たに技術の引き出しが増えた感覚もあります。その経験も含め、私の大好きなサロンワークに活きていると思うので、やってきてよかったと思っています。
何より、私にとって一番の目標は、一生現役であり続けること。たとえ宝くじが何億当たったとしても、美容師を辞めたくないくらいこの仕事が大好きなんですよ。
女性である以上、子育てや結婚などライフステージの変化に影響を受けることもあると思いますが、そこでキャリアを諦める気は一切ないですね。うまく時間を調整すれば、案外、美容師と家庭って両立しやすいんじゃないかな?とすら思っています(笑)。
今のHEAVENSには女の子のスタッフも多いので、私が先陣を切って革命を起こしていけたらと思っています。子供を産んでも戻ってきやすい環境を作りたいですし、自分の状況が変わっても、仕事との向き合い方は変えずにいきたいですね。

- プロフィール
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HEAVENS OMOTESANDO Director/Salon Manager
NAE
宮崎県出身。日本美容専門学校卒業後、2015年に新卒でHEAVENSに入社。
現在入社12年目。現在は表参道店の店長を務め、後輩の教育、サロンの運営にも注力している。高いカット技術やパーマのデザインを武器に、男女問わず多くのお客さまから支持を受けており、HEAVENSでもトップレベルの売上を誇る人気スタイリスト。
Instagram:@nae_nagahama
(文/岩木日向子 撮影/菊池麻美)
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