「一番」の証明に挑み続ける。原宿『Lond un Maison.』『Lond re Maison.』代表・山野俊貴、クリエイションの軌跡
原宿で2店舗を率いながら、クリエイションを伝える
――昨年、原宿に『Lond un Maison.』、今年は『Lond re Maison.』を出店されました。代表として、どんなコンセプトを掲げていますか?
僕は本部所属のまま、直営という形で自分の店舗を持っています。Londグループは“年商日本一”を目指している会社ですが、チェーン化させないことが僕の役割だと思っていて。クリエイティブディレクターとして、業界で勝てる人材を原宿から輩出したいと考えています。
昨年から「山野塾」というクリエイションアカデミーを社内でスタートさせ、十数名のメンバーと作品づくりに取り組んでいます。バックステージの経験を生かし、コンテストで勝てる作品づくりやヘアメイクの技術を伝えていて。この2年で、後輩たちがアリミノ フォトプレゼンテーションのグランプリ、ミルボンDA-NEXTの審査員賞、D-CONTEST優秀賞、ドリプラファイナル選出など好成績を収めています。
原宿のチームを、将来的に10店舗・100名規模にするのが目標です。ヘアデザインとメンタルに向き合えるスタッフだけで構成したいし、その基準は妥協しないつもりです。

――外部でクリエイションのセミナーも行っているそうですね。
依頼があるので、2ヵ月に1本ほど行っています。あとは、母校でもときどき「失敗しない就活」というテーマで授業をしています。僕自身が失敗したので(笑)、かなり説得力ある授業になっているんじゃないかと。いつかクリエイションも教えたいなと思っています。
サロンワークでは、「刈り上げ女子」で月売上400万円!?

――業界誌でも活躍されていますが、サロンワークでも高い売上を出されていますね。Instagramでは「刈り上げ女子」の打ち出しも人気だとか。
作品撮りに取り組んできた経験を活かして、実験的なデザインにも自分らしく取り組みたいと考えています。それが「刈り上げ女子」というキーワードにリンクしました。ありがたいことに、銀座店にいた頃の最高月売上は400万円を達成しました。300名ほどのお客さまを担当し、そのうち4割が刈り上げをオーダーされます。ショートは工程がスムーズで時間生産性が高いため、売上につながりやすい側面がありますね。刈り上げカットやハンサムショートのセミナーも行っており、技術の普及にも力を入れています。

――最近は、アート作品制作にも取り組んでいると伺いました。
はい。美容師のクリエイティブ作品に価値を持たせたいという思いがあって、一歩踏み出しました。ヘアは実際に作って撮影し、顔はAIで生成しています。さらに和紙や金箔といった素材を組み合わせた一点ものです。これは「似合わせる/似合わせない」をテーマにした表現で、美容師の作品がどうしても“似合わせ”中心になりがちな中、アートとしての新しい価値を示しています。

作品を通して伝えたいのは、技術だけでなく、美容師の仕事の背景やストーリーです。そのためYouTubeチャンネルも開設し、作品の魅力を動画で届けています。来年は個展で6作品の展示・販売を予定しており、まずは5年間続けるつもりです。
――来年、「山野塾」を外部に開く構想もあるそうですね。
はい。利益目的ではなく、クリエイションに興味のある人の“最初の一歩”になれたらと考えています。これまで撮影依頼はお断りしていましたが、今後は受けていく予定です。
外部では「東京山野會」というクリエイティブ会も運営していて、業界誌でも特集を組んでいただきました。教育にも力を入れつつ、自分のクリエイション熱も落とさず走り続けたいですね。


- プロフィール
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山野 俊貴(やまの・としき)さん
(株)Lond クリエイティブディレクター
『Lond un Maison.』『Lond re Maison.』代表
茨城県出身。日本美容専門学校卒業後、都内有名店1店舗を経てLondに入社。1年目からクリエイションに注力し、8年間でヘアコンテストに50回挑戦。サロンワークでは”刈り上げ女子”、”ハンサムショート”で月売上400万円を達成。店長などを経て、2024年5月に『Lond un Maison.』、2025年8月に『Lond re Maison.』を原宿にオープン。
Instagram:@yamano.jp
YouTube:@yamano.jp_harajuku
(文/織田みゆき 撮影/松林真幸 MIKAN inc)