光も影も、自分の表現の糧にする。ØØn 奈津己さんの「ブレイン解剖」

愛ゆえのスパルタ教育で培った、自分だけの武器

 

 

うちの会社には、「自分の好きなものに関しては常にお客さまより詳しくあるべし」という理念があります。美容師の仕事において、デザインや技術力はもちろん、接客もリターンに繋げるために欠かせない要素ですよね。「お客さまより無知なのは接客業として恥ずかしいことだし、こちらからオススメできてなんぼ」という考え方で、そこに関しては結構スパルタなんです(苦笑)。

 

例えば、映画が好きだと言ったら「じゃあ、ただ好きなだけじゃなくて人におすすめできるくらいいっぱい観てね」って言われたりする。「映画好きって言ったのに、この作品知らないなんてありえないよ」と言われることもある(笑)。それくらいストイックなので大変ではあるけど、それは多分、その人自身の武器を見つけさせるための愛の鞭だと思うんですよ。

 

 

私も、入社当初に聡さん(LECO代表 内田聡一郎さん)から「奈津己は、浦さんや楽人にないものを見つけて武器にしてね」と言われました。自分にはなにがあるだろう?と考え、たどり着いたのがアングラ漫画。電子化されていないものが多いので、書籍を地道に集めています。中でも好きなのは、ガロ系と呼ばれるジャンルです。じわじわ恐怖を感じたり、すっきりしない結末だったり、読み終えた後にズーンと考え込んでしまうような題材が多く、その暗さも込みで好きなんですよ。

 

本格的にハマったのは入社後ですが、昔からその気はあったんです。みんなが仮面ライダーやプリキュアを見ているときに、私はゲゲゲの鬼太郎とブラックジャックを見ていたり、小学生の頃は江戸川乱歩の推理小説にどハマりしていたり…。そもそも我が家は、楳図かずおの展覧会に家族で行くような変わった家で、私のカルチャー観の根本はそこにあるような気がしますね。全体的に、ちょっと薄暗い(笑)。

 

 

でも個人的には、その暗さはクリエーションをする上で大事なことだと思っています。闇を知って光を知るというか、暗い部分に目を向けているからこそ、表現に深みが出ると思うんです。自分の中に暗い部分がないと、作品で少しの違和感や毒っ気を出そうとしても説得力がなくなってしまう。それを表現できることが、私の“私らしさ”につながっている気がします。

 

王道を知らないのは「ダサい」と思うように

 

 

アングラ漫画は今も集めていますが、エンタメど真ん中の王道漫画もたくさん読みます。正直、以前は「みんなが知らない作品こそが面白い」と少し斜に構えているところがありました。

でも1年目の頃、楽人さんから「NARUTO見たことある?」と聞かれ、「ないです」と答えたら「そんなんでアニメ好きとか言ってんじゃねえよ」というアニメハラスメントを受けて…(笑)。朝から晩までNARUTO漬けの日々を過ごし、1カ月で最終話まで完走したんです。結果、めちゃくちゃ面白かったんですよね。

王道の作品が人気なのは、やっぱり面白いから。それを知らないって人生損してる!と思ったし、今となっては、王道を知らずにサブカルチャーやアングラカルチャーばかり深掘りしているのは逆にダサいとすら感じるようになりました。

 

 

最初にお話ししたスタイル作りの話に通ずるところもあるのですが、王道しか知らないのも、それ以外しか知らないのも、人としての面白みが足りない。両方を知った上で初めて、「自分はこれが好き」と言えるんじゃないかなと思っています。

 

そんな私の今のイチオシは、「FANTASTIC WORLD」という漫画。オールカラーでこんなに可愛いのに、今まで知ってる人に出会ったことがないんですよ。話の内容はわかりやすい冒険譚で、気軽に読めるラフなストーリー。でも絵柄の可愛さや色彩がすごく刺さって、ここから着想を得て作った作品もあります。

 

(FANTASTIC WORLD/ひらのりょう リイド社)

 

さっきお話ししたように、私はいくつかのイメージを混在して作品作りをするので、そっくりそのまま再現するわけではないんですけど。作品を読んで得たエッセンスを抽出したり、どうしてこの場面でこの2色を組み合わせたんだろう?と考えて、作品の概念をヘアに落とし込むようなイメージで作っています。

 

 
 
 
 
 
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これからの目標は、惹きがあるデザインを作り続けることです。スタイル写真はこの世に溢れていますが、その中でも目を引いて、「わー!」と無条件にテンションが上がるような作品を作りたいと思っています。誰が作ったかわからなくても、可愛いスタイルは自然と目を引くじゃないですか。私っぽいと言ってもらうのももちろん嬉しいけど、私が作ったと知らない人のことすら惹きつけるようなスタイルを作りたいですね。

 

プロフィール
ØØn/店長
奈津己

東京都出身。国際文化理容美容専門学校渋谷校卒業後、新卒でQUQUに入社。独自の色彩感覚、バランス感覚で生み出すデザインで、サロンワークのみならず業界誌やクリエイティブの分野でも活躍中。

Instagram:@oon_natsuki

(文/岩木日向子 撮影/菊池麻美)

 

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