デザインが一瞬で消費される時代に、何を創るのか? QUQU 楽人さんの「ブレイン解剖」

 

トレンドの一歩先を行くクリエイティブを生み出す美容師は、どんなヒトやモノにインスパイアされるのか。クリエイティブな感性を持つ人たちに直撃取材し、紐解いていくのがこの企画「ブレイン解剖」です。

今回は、QUQUのトップスタイリスト、楽人(らくと)さんのインタビュー。常に新しいクリエイティブを発信し続け、業界の注目を集めるQUQU。そんなQUQUで活躍する楽人さんと言えば、ビビッドな色使いや独自のセンスで生み出すカラー配置で生み出す印象的なヘアデザインが代名詞です。ただ近年では、SNSの普及によってデザインが消費されるスピードが格段に早くなったことで、難しさも感じる瞬間もあるそう。

SNSでの発信とクリエイティブの両立に難しさを感じている美容師さん、必読のインタビューです。

 


 

リール普及の影響で、デザインの消費スピードが一瞬に

 

 

2年半前に取材していただいた時と今で、僕自身のマインドには大きな違いはありません。ただ、作るスタイルや世の中は変わってきている気がしますし、その要因として大きいのは、SNSの影響ですよね。リールが根付いたことで「良い」とされるスタイルが一瞬で廃れるようになった今は、トレンドを作ることよりもスピード感に対応する難しさの方がある気がします。

元来トレンドというのは移ろうもので、常に新しいものが出てくる今は、追い続けるだけでも息切れするし、作る方はもっと大変。ほとんどのデザインに先人がいて本当の意味で新しいものはほぼ無いのに、目新しいものや次のトレンドは無数に生まれてくるんですよ。

僕は、マスに浸透していったものが「トレンド」と呼ばれると思っているので、トレンドを追うと言うよりも「このスタイルはトレンドになってしまったから、また次のものを探さないと」と思うタイプ。だからこそ感じるのかもしれませんが、最近はトレンドが生まれて廃れるまでのサイクルが本当に短いです。

 

 

必死になって新しいものを考えてもそれはあっという間にSNSで広まってしまうし、見ている側もすぐに飽きてしまいます。自分が考え抜いたデザインが一瞬で消費されていくことを肌で感じるので、そこはすごく難しいですね。

その影響というわけではありませんが、最近はこれまで以上にカットに注力したスタイル作りをしています。以前からカットは得意だったのですが、カットの本当の上手さは実際に手で髪を触った時の感覚や、セットのしやすさなどで感じるものだと思うんですよ。それを画面上で見せるのは難しいですし、カラーの方が写真でも個性が出せるので、今まではカラーをメインに打ち出していたんです。それでも今は、ここまでカラーが飽和してきたら後はカットでしか違いは生み出せないのでは? と思い、さらに力を入れるようになりました。

お客さまもそうしたムードになってきたのか、カラーでは色を使わずにホワイトとブラウンのみ、カットの毛流れと配置で個性を出すような無彩色のデザインをオーダーされる方が増えていますね。

 

初心に返って、今はファッションがインスピレーション源

 

 

以前は、昔のカルチャーのリバイバルを意識していましたが、今は原点に立ち戻って、ファッションの流行を意識的にチェックするようになりました。シーズンごとのルックも見ますが、ルックは等身大の表現ではないし、その雰囲気をストリートに落とし込むのは個人的に少し違和感がある気がして、ブランドのSNSを見て情報を得ることが多いです。

それに、最近はルックよりもSNSの方が情報が早かったりするんですよ。そうした投稿にファッション系のインフルエンサー達が反応しているのをチェックして、「今季はこれかな」と当たりをつけています。

 

 

いろいろな国の人のアカウントを見ますが、韓国やアメリカの人が多いですね。国によって系統が違うので面白いです。アメリカではいわゆるグランジと呼ばれるジャンルや、Y2Kに寄せたファッションの人が多く、韓国はテック系で、スポーツウェアのようなテンションの服を着ている人が多い印象ですね。気になるスタイルをピックしながら「これに合うヘアって何かな」と考える感じです。ただ、テック系に関しては帽子ありきのファッションで、そうでなくてもフードを被っていたりして…正直「もう髪の毛関係ないな!」っていう場合もあります(笑)。

 

>仕事の情報収集と趣味は別物! アニメはあくまでも趣味

 

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