生物化学に長けた美容師ライコウが切り拓く4つのフィールド。サロンワーク、商品開発、オンラインサロン、講師業。すべては美容師とお客さまのために
髪質改善のスペシャリストとして自身がオーナーを務めるサロン『Period.(ピリオド)』に立ちながら、数々の商品開発を手がけ、セミナー講師としても活躍する美容師ライコウさん。学生時代に培った化学知識を駆使して”本物”のヘアケアアイテムを追求し、原料から作るなど類稀な開発を行っています。3つの会社を立ち上げて美容の可能性を広げることに挑み続けるライコウさんは、なぜそこまで走り続けられるのでしょうか。美容に全力を注ぐ、挑戦の軌跡を取材しました。
20歳のときに、研究者から美容師の道へ方向転換
――まずはライコウさんの経歴から伺いたいのですが、学生時代は「生物化学」を専攻されていたそうですね。
はい。主に動物の体毛についての研究を深掘りしていましたが、生物体内で起こる化学反応や物質の構造・機能を研究する分野ですね。
動物の体⽑って、いろんなことに転⽤することができるんですよ。例えば、トリートメントの中に⼊っているケラチンという成分の原料が取れたりします。何の動物から何が取れるんだろう︖といった研究をしていましたが、その頃はまさか⾃分が将来的に⼈間の⽑髪の研究をするとは、 思いもしませんでしたね。
髪にも大きく関わるタンパク質、酵素、糖や脂質、ビタミンやホルモン、細胞内の代謝経路など、細胞や組織がどのように機能するのかを分子レベルで理解することが目的の分野です。
――そこが繋がったのは面白いですよね。どのようにして美容師の道に?
僕は根っからの陽キャで、人とコミュニケーションを取ることが好きだったんですね。化学は得意だったんですが、研究室にこもるような仕事より、接客の仕事が向いているんじゃないか、むしろそっちの方がやりたいな…と思い始めて。都内で美容室を経営している母と姉が、「うちで働きながら美容師免許を取ったら?」と言ってくれたこともあり、思い切って挑戦することにしました。
そこから母の店で勉強させてもらいながら免許を取得し、スタイリストデビューして。10代から70代くらいまでのお客さまが来店されるような地域密着型サロンだったので、客層はかなり幅広かったです。ある程度いろんなことができるようになってからは刺激が欲しくなり、自発的に外部のセミナーに参加したり、いろんなサロンにご挨拶に行って美容師仲間を作るようになって。それで24〜25歳のときに、いい美容師仲間ができたんです。
――その頃から、すでに髪質改善に注目していたんでしょうか。
自分なりに研究は進めていました。それこそ、化学の知識を生かして自宅でいろんな実験をしていたので、髪質改善で使う剤も原料から仕入れて、鍋で煮込んだりして手作りしていたんですよ。それを美容師仲間に廉価で譲ったりしていたんですが、知らぬ間に口コミで広がっていき、需要が高まってきたんですね。これはもう自分一人では作りきれないな…と思い、工場にレシピを持って行き、お願いすることにしました。
――レシピを持参!工場の方も驚かれたのでは?
最初の頃は、煙たがられていたと思いますよ。「この温度になったらこれを入れてください、下がったらこれを入れて撹拌を何回してください」などと細かく指示するので(笑)。でもすごく協力的な方々で、工場でお願いするようになってからは、すごく楽になりましたね。