石の上にも3年? いや、40年。Double 山下浩二が語る、“二流が消える時代”の選択-soucutsの庭Vol.2-
練習ではなく、研究をすべし

内田:山下さんも、練習っていうか、「研究」をしていた。
山下:うん。当時ね、横手先生(元ZUSSO、PHASE横手康浩さん)から、「マニュアル作って」って言われて。とにかくすぐに(チェックが)通らないようなマニュアル作ってと。だから毎日裏で、このカットはこうだとか(考えた)。その時に、レイヤーのルールに気づいたのね。24歳位かな。だからマニュアル作って、と言われてよかったよね。
内田:ZUSSOのカリキュラムは、山下さんが「研究」して作ったんですね。
山下:そうですね。カットはね。
内田:横手さんも横手さんでカットのパイオニアですけど、横手さんから習ったってわけじゃなくて。
山下:そうそう。前に働いていたお店で、色々と見よう見まねでやってたのでね。ただ、レイヤーの仕組みはわかってなかった。その時(マニュアルを作るとき)に、「そういうことか!」って、わかったんですよ。
内田:ちなみにそれは、どういうことをやってたんですか? ウィッグを引っ張り出して、色々さわって?
山下:展開図みたいなやつをさ、書かないといけないじゃん、レイヤーの試験をするわけだから。でも、やってるうちに、「辻褄合わなくない? レイヤーって」と。
内田:引っ張り出して、展開図通りに切っても、思った通りにならない。
山下:ずれるっていうのかな。丸いのをまっすぐに切ってくわけでしょ。難しいよね。

内田:そこに気づいたのが、ZUSSOに入って24歳位の時。当時はレザーを使わず、シザーで?
山下:(レザーのことは)考えもしなかったね。
内田:そこからレイヤーの構造っていうか、頭の形に気づいて「研究」したと。
山下:そうですね。でも、僕の下にはいろんな人たちがいたのでね。みんな色々考えがあるから、僕が言っていたレイヤー(の構造)は、「意味がわかんない」という人もいましたよ。今だったら、普通の話なんだけど。
ガイドに引き出して、切るというのは理解できる。でも同じ位置で切っていると、どんどんガイドが削られて、穴が空いていく。それが丸くなるように切らないといけないのでね。それが難しかったよね。でも、気づいた時は、「あ、これかー!」と。
内田:それは練習じゃなく、「研究」して、自分でピンときた。
山下:練習っていうか、毎日髪の毛いじってたら、上手くなるよね、誰だって。ただ、理屈がわかんないのは、「研究」しないとね。
さわればさわるほど、上手くはなるけどね。でも何も考えないで、みんな練習するじゃない。何でこうなるのかを考えただけで(全然違うのに)。
内田:山下さんが、そこに気づいたのは20代前半。デビューしてからまだ数年の話ですが、3年、5年…と年月を重ねて、10年後のほうが上手くなっていましたか?
美容師歴40年目にして、上手くなった

山下:上手くなったのは、最近だもんね。
内田:山下さんで、最近…(笑)。
山下:コロナのちょっと前位には、大体わかったね。
内田:本当に最近ですよね(笑)。デビューから40年位経ってますよね(笑)。40年目にして、上手くなったと。
山下:成長っていうかね、説明できないことが、ほとんどなくなった。みんなね、説明できないんですよ。「やってみせる」というのはできるけど、説明できないでしょ。なんでそうなるか。そういうのがほとんどなくなったのが、60歳位かな。
内田:感覚的なところを、ロジックでがっちり固めたのが最近。
山下:なんでこういうことが起こるのかというのを説明できないと。
内田:タイトル的に申し訳ない気持ちに…。3年どころか、10年どころか、40年…ですよね…。
山下:ただそれがね、いらない人もいるわけですよ。
内田:いらない人もいるんですか?
山下:だって、30歳で辞めたらいらないじゃん。
内田:続けるのであればってことですね。
山下:楽しく美容師生活を送るなら、上手いほうがいいんじゃない。これから難しい業界だから。

内田:じゃあ、タイトルに対しての“解”でいうと、「40年目で、やっと上手くなった」と(笑)。
山下:3年で技術者になると、見てきているものが少なくて、自分で考えないといけない。だから、天才的な才能がいるんだよね。才能がある人は、いいんじゃない?
内田:山下さんで(才能が)なかったら、誰もないですけどね…。
山下:やらなきゃいけないことを、どんどん押しつけられてきたから(自分で考えるようになった)。技術者になれとか、マニュアルつくれとか。24歳の奴に。
内田:(自分で考えるようになった)きっかけは、無理やり任されたことなんですかね。でも、教えられて、待ちの姿勢じゃなくて、自分からまずどんどん考えろというのが(山下さんの)前提にあるってことですね。
山下:毎日「研究」しないとダメだよね。3年じゃ無理っすよ、そんなもん。3年で何が良くないかというと、お客がかわいそう。上手いわけないじゃん、絶対に。
美容師の仕事の醍醐味とは?

内田:でも、世の中的には2年位でデビューするサロンもあるわけですよ。カットは3パターンくらい。ワンレンとかレイヤーの基礎的な基礎を学んで、あとはセニング終えて(デビュー)、というところもあると思うんですけど。
山下:それでも、できるやつはいると思うんですけどね。それに若い子は、それでいいだろうから、逆に。
内田:お客さんの年代が?
山下:若ければ、値段を安くしてさ。学生さんとかね。だって、18歳が20歳に見えたって、何の問題もないでしょ。でも35歳が40歳に見えたら、それはやばい。
だからね、そこはやっぱり腕なんですよ。技術っていうか、いろんな目が要る。35歳はね、36歳に見えちゃダメなんです。絶対に。学生さんが来て、22歳が25歳に見えたって別にいい。でも、25歳が27歳に見えたら嫌なんじゃないの? 29歳なら、22歳くらいに見えてもいいかもしれない。その“ちょっとの差”をどうつくるか。そこに美容師の差が出るんですよ。
10代のモデルみたいな女の子たちだったら、そりゃ何やったっていいでしょ。だから、そこで食っていくんだったらいいんだけど、やっぱり美容師さんが醍醐味を味わうのは、そこから先なんだよね。
内田:大人世代を、1歳でも若く見せられるかということですか。
山下:そこにお金が発生するんだと思うよ。
内田:すごい今、腑に落ちました。確かにそうですね。若い人が、若い人をやってるうちは、まだOK。
山下:そこは、流行の中にいればいいわけなので。
内田:流行から外れて、その人に本当に似合うものとか、やりやすいものは何なのかを突き詰めると、3年どころじゃ足りない。
山下:だからいろんなものを勉強しないと見えないよね。自分より、もし10個上の流行を知らなかったら、「こういう風にしたいの」って言われても、全く何のこっちゃか、わからないよね。だからその「研究」をしておかないと。