石の上にも3年? いや、40年。Double 山下浩二が語る、“二流が消える時代”の選択-soucutsの庭Vol.2-
コーミングとドライができれば、カットは簡単?!

内田:当時は技術的な話ばっかりしてたってことですか?
石原:技術的な話も多かった。でも、ほんと放任っていうか。あんまり何かを言われたことがないんだけど。例えばさ、声が大きい人って勝手に聞こえてくるじゃん。だけど、声が小さい人って聞き入ってしまうじゃん。(山下さんは)声は大きいんだけど、聞き入ってしまう。一つ一つ、逃さないようにしようって。
髙田さんは、山下さんにべったりついていて、僕は当時、上原さん(Rougyオーナー・上原健一さん)についていたけど、山下さんの言うことは気になるじゃない、社長だから。だから髙田さんに、「なんて言ってました?」って聞いたりとか、山下さんの撮影は必ず出たりとか。そんなに意識して言ってないであろう、山下さんの言葉をメモったりとか。手取り足取り教えてくれない分、自分で掴まなきゃって思ってた。一緒にいれなかったから、余計に意識していたっていうのはあったかな。先輩もいっぱいいたし、色んなスタイルがあったんだけど、やっぱり山下さんがやってることは、ずっと気になってた。
写真もいっぱい撮ってたし。スタジオがDouble にあって、そこでもうしょっちゅう撮影やってた、山下さん。当時40歳くらいですか?
山下:うん。
石原:毎日くらい撮影やってて。そこには必ず参加してた。
内田:当時、山下さんがカットを教えるってことはなかったんですか?
石原:いや、練習会では(教えてた)。でもそれは途中からだったね。最初は山下さん、忙しかったから、そこまでは。だから今のが素晴らしいよね。
山下:俺の場合はね、教えるっていうより違いを見せるわけ。これはいいけど、こっちのほうがもっといいんだっていう話をするんだけど、言ったってわかんないでしょ。だから目の前でやると。「ほら、こうなる」って。
髙田:その「ほら」がわかんないんですよね。「ほら」って言われても、手品みたく見えてた。
石原:でもその当時教えてもらっても、わかんなかったと思う。
山下:なんでコインが消えるんだ、みたいな話だから。
内田:やって見せてもらってるけど、わかんない。
石原:だんだん自分でやってくると、こうかなって。山あり谷ありじゃないけど、わかんなくなって聞いて、わかって、わかんなくなって…。
内田:当時、Double の人がよく言ってたのは、ドライで5年かかると。
山下:いや、5年でできたら天才だよ!

一同爆笑
内田:あ、すいません!(笑)
山下:簡単にいうと、コーミングとドライがわかったら、カットなんて、なんだってできる。わからないから切れない。コームをどこに落として、どこに落ちて、その人がどういうさわり方をして、1時間位経ったらその髪がどこにいくかっていうのがわかったら、カットなんて簡単じゃん。
それがわかんないから、しょうがないからアイロン使ったりするわけでしょ。それがわかったらアイロンなんかいらないから、絶対に。髪が1時間経ったらどこにいくかが、わかりさえすればいいんだけど、それ、10年じゃ無理だと思う。無理。俺はそこが早かったのよ、人より。みんな知ってると思ってた。でも聞いたら、「え、そんなのやってるの!?」って。「あ、これもしかしたら、俺しか気づいてないかも」と思って。
内田:なるほど…。(お二人が)ドライ合格レベルになったのは10年位経ってから?
山下:いやいや、まだでしょ。
石原:そうかあ(笑)。まだかあ(笑)。店で偉そうなこと言ってるのに(笑)。
山下:でも、言ってることわかるでしょ?
石原:わかりますよ。でも、教えられた時ってわからないじゃん。後から気づくものじゃない。「あ、こういうことかな」ってよく思い出すんだよね。山下さん、こう言ってたなって。人を教えていて「あ!」って思う時がある。それで山下さんに、たまに会った時に聞いたりすると、「あ、もうそれ俺やってない!」(笑)。変わっとるんかい!(笑)。 進化し続けるよね。
山下:いや、それはなんの世界でもそうじゃない。基本って言ってたのが、変わっていくじゃない。
石原:一番固執してないかもしれない。
山下:知っちゃったらしょうがないよね。
山下イズムを継承する髙田さんと、いい意味で違う石原さん

内田:お二人の当時の印象を山下さんから伺ってもいいですか?
山下:この人たちは、楽しかったですよ。
内田:髙田さんの印象から伺ってもいいですか?
山下:髙田くんはね、ほんとにね、俺の真似が上手でしたよ。
髙田:嬉しい!
山下:変なとこ見てんのよ。「あそこ、なんで残したんですか?」みたいなさ。
内田:でもなんか、わかる気がします。一番山下イズムを感じるというか。
山下:一番近いかもしれない。変なとこ、ちゃんと見てるよね。無意識にやってるようなこと。「なんでああいうことするんですか?」って言われても、「なんでだろう…」ってなっちゃう。
内田:石原さんは?
山下:無茶振り。
石原:(笑)。
内田:無茶振りして、無茶振りに応えてくれる人ってことですね。なんかそのイメージあります。祭りの人ですよね。お祭り男って感じ。
石原:(笑)なんか羨ましいな、髙田さんが。

内田:一番外交も上手なイメージありますよね。僕もDouble で一番仲良くなったのは、石原さんだったので。
山下:こっち(石原さん)はいい意味で、俺の感じじゃない。ちょっとね、俺のこと馬鹿にしてるんだよ。
石原:してない、してない!(笑)。
内田:当時からご飯に行ったりしてたんですけど、それは感じてました。尊敬してるからこそ、(山下さんと)違うことしないと頭角を現せないとは、当時から言ってましたよね。
石原:山下さんについてない分、僕はいろんな人を見れたから、自分の中ではよかった部分もある。でもその分、意識したかな。髙田さんが羨ましかったな。
髙田:直談判したんですよ。山下さんにつきたいって。Double ができる前は、違う先輩たちがやってる店舗にいたのね、アシスタントの頃。4年目なのに、山下さんと1回も同じ店舗になったことがなくて。と言うのも、ちょっと調子悪いなとか、辞めたいなみたいな子たちを、山下さんのところに行かせて復活させるっていう時代があったの。だから俺たちみたいな雑草系はほっとかれたのよ。
石原:ブーブー言ってたよね。
ドライをやってもやっても、水をかけられる

髙田:俺は納得できないと。「俺は見たいです、近くで見たいです」って直談判して。それで、「わかった、わかった」ってなって、Double オープンと同時につかせてもらったの。でも、実力が足りなすぎて、すぐ辞めたくなった。全部直されるから、山下さんに。
山下:全部水かけるからね、俺。
髙田:ドライしても全部。全員だよ。嫌われてるのかなって思った。
内田:4年経ってたら、そこそこ自信もあったわけですよね。
髙田:そうなの。ちょっとできるのかな。とか思ってたけど、全くだったから。
石原:でもあの客数で、全部濡らすのすごいよね(笑)。妥協しないのが、すごいじゃん。普通は諦めるじゃん。
山下:覚えてますよ。30人やっても、全部直してた。HEARTSの時なんか、シャンプーしてたからね、頭にきて。あまりにも下手すぎて。お客さんがもう、「え??」ってなっちゃって。
内田:「乾いてるのに、違うんですか?」って思いますよね(笑)。でもやっぱ今思うと、違ったな、ってことなんですかね。
髙田:違うのはわかるのよ。だから直されるじゃん。山下さんが直したのを見ればわかるんだけど、できないの。言われてもわからない。
内田:乾かし方で、カットのフォルム感とか毛先が全然違うわけですね。
髙田:違うのはわかるんだけど、できない。
山下:ん?まだできない?
髙田:いやあ…(笑)。
石原:ここで「できる」って言ったら、なんかすいませんってなっちゃう…。
髙田:でも、誉めてほしかったよね。それは今もある。独立してるから、なおさら。
今はもう、一緒に現場に立ってるわけじゃないじゃないですか。仕事を直接見てもらえるわけでもないし。だから、作品をつくって、それを見てもらうしかない。で、「よかったよ」って言ってくれたりするんですよ。いまだに。
内田:当時から今でも、山下さんから見て、俺より上手くなったなって人はいない?

山下:俺65だからね。まだまだ全然。いいところもあると思うんだけれど。
僕がやっていることに関しては、まだ来ないだろうな。多分ね、70でもまだ上手くなる、やってれば。今はね、あんまり説明できないことないからね。カットに関してですよ。
内田:僕ら40代で、アラフィフなわけなんですが。その当時、山下さんはどうでした?今思うと。
山下:いや、あなた方のが上手いんじゃない? 俺、50過ぎてからだもん、まあまあになったの。
石原:そんなこと言われたら俺、なんも言えないじゃないですか(笑)。
内田:当時バリバリ直されてたのは、山下さんが40代?
石原:40歳くらいじゃないかな。
内田:その時にドライしたのをシャンプーで直すっていう世界線…。今ないですよね?
石原:ない。詰まるから、他のスタイリストから、めっちゃ白い目で見られるのよね。「お前らができないから、詰まってるんだぞ」っていうあの空気。
髙田:あったね…。
石原:もう戻りたくない…。
山下:あなた、泣きそうな顔してたもんね。
石原:泣いてた、泣いてた、心は。