石の上にも3年? いや、40年。Double 山下浩二が語る、“二流が消える時代”の選択-soucutsの庭Vol.2-
上手い美容師を育てるとは

内田:これはもう満場一致だと思うんですけど、上手い人が育つサロンがDouble だと思うんですよね。今いろんな有名なサロンがあるけど、上手い人を育てられてるっていう文脈でいくと、右に出るサロンっていないと思うんですよ。異論ないと思う。
お二人はもちろん、今となってはすごい上手い美容師さんだし。山下さんからすると、上手い美容師さんを育ててるっていう自負はあったんですか?
山下:いや、それはなくて。ヒントを言っていただけなので。上手くなってるかどうかはよくわかんなかったですね。だってあんまり教えないし。見てればわかるだろって感じだったから。今で言うさ、パワハラじゃん。パワハラ三昧だったから。ショー前なんかさ、夜中2時前まで店にいたからね。
石原:2時前じゃないっす、朝っす(笑)。
髙田:2時ならまだしも(笑)。
山下:寝てたもんね、床に(笑)。みんな帰れないから、俺も帰りづらいじゃん。
石原:でもそれで、残ってるからすごいよね(笑)。余計にお互い帰れないみたいになっちゃって。
内田:それは、衣装のクオリティだったり、演出だったりで?
山下:だって、1週間前に変えろとか始まるからね、俺の場合。
石原:ね、無茶振りでしょ。
内田:あるあるでしたよね、当時は。

石原:あるあるだよね。でも、その諦めないところが面白い、しつこさっていうか。それは、前からあったよね、山下さんは。
山下:今は言わないよ! 今は、「半年前から準備しましょ!」って。
内田:流石に今は気を使うみたいなところもあるんですか?
山下:今は、まあ前からだけど、できることしか言わないので。今の状態で、できることをちゃんとやってる。
内田:でも当時は、できなくても振られてた?
山下:いや、できると思ってたから。
石原:それがほら、ずるいよね。できると思って言ってる、ってさ。
髙田:でも、結局できちゃうんですよね。たぶん。こっちからしたら、「いや、無理っすよ」って思いながらやってるんです。でも、山下さんは「間に合うでしょ?」って顔してる。で、結果ちゃんと良くなる。だから最後は、「できたね」ってなるんですよ。そうなると、またやっちゃうんですよね。
山下:頭使えって話よね。
内田:今は人を見極めて、無茶振りすることも?
山下:いや、ないですよ!ホワイト企業なので(笑)。前はほら、真っ黒に近い黒だったからね。
石原:漆黒(笑)。
内田:でもそれがあるから、上手い美容師を輩出できてたということもあるわけですよね。それでいうと、今はホワイトだということなんですが、そうなることでの懸念はあるんですか? もっと上手くなるやついるけどなあ…みたいな。
山下:そこを考えるのが、僕らの仕事だと思うのでね。昔よりも僕が残って教えたり、セミナーを社内で開いたりしてますよ。この人たちには悪いけどね、教える暇なかったもん。「見てりゃわかるだろ、バカヤロー、このヤロー!」(笑)。今は優しく、手取り足取り! 時代だからね、しょうがないよね。
(大盛り上がりの中、リスナーからの質問コーナーへ。「今の20〜40代の美容師を見ていてどう思うか」、「シザーとレザーについて」、「JHAについて」などなど、たくさんの質問に、山下さんならではの視点でお答えいただきました!詳しくはpodcast「soucutsの庭」でCHECKを!)
二流が三流に食われる時代に

内田:最後に。山下さんのファンって、今ちょうど独立している世代が一番多いんじゃないかと思うんです。これからの美容師はどうしたらいいのか。アドバイスをいただいて終わりにしてもいいですか?
山下:うわー、難しいな。この業界ってさ、世間全体もそうじゃない? テレビもそうだけど、どんどん終わり始めてるでしょう。本筋じゃないものばかり取り上げるようになって。そうすると「オールドメディア」なんて言われる。馬鹿にした言い方だよね。でも、そうなりつつある。ってことは、そこにもう“新しいもの”はないじゃない。
だからね、30代、40代の人たちは、もっと動いたほうがいい。個人でバラバラにやるんじゃなくて、グループで集まって、若い子のために何かをつくってもいい。同じ場所で、同じ志を持って、ものをつくったりとか。そして、下の世代に教えていかないと。そこにはちゃんと楽しみがあるんだって。それをやらないと、この業界も、お寿司屋さんみたいな世界になっちゃうんじゃないかな。
内田:お寿司も、10年修行しないで、すぐやっちゃうみたいな。
山下:回転寿司が悪いって言ってるわけじゃないよ。でも、一流、二流、三流ってあるとしたら、二を食ったのは回転寿司業界だと思うんですよ。一流は残ってる。でもさ、何店舗もないでしょ。1軒とか2軒とか。その下にいた人たちが、回転寿司に食われたわけで。やっぱ、僕らの業界もそういう風になっていくので。みなさんはどこに行きますか? 選ばないと、負けますよって話。
内田:肝に銘じたいですね…。
石原:ありがとうございます!
山下:どれが正しい美容師って、ないじゃない。2年で育てるシステムを作ってる人たちは、これもすごいよね。でもそこに、二流の人は食われるわけじゃん。だから食われない一流に残るのか。それとも同じチェーン店をやるのか。さあ、あなたはどれを選ぶんですか?
上に残る連中は集まって、「ここは美しいとこなんだ」って伝えないと。「俺は200店舗持ってる、300店舗持ってる」って人達に、頭が上がんないんじゃないの。俺はなんとも思わないよ。だってどうせちゃんと切れないんだろ? 店舗持ってるだけじゃん。
だから、上に残らないといけないなら、そこを考えた方がいいんじゃないですかね。それか、回転寿司をやるか。どっちもいいことよ。どっちが悪いってことじゃない。
ただ、二流にいると食われますよ。この業界、一、二、三の二がない。
三と言われているところだって、もっと高めないと、みんな離れて行くからレベルが上がってくるわけよ、どんどん。そうすると、一と三の差がなくなってくるわけ。それでも、ぶっちぎらないといけない。そこを、俺らの次の人はどうするんですか?
内田:最後に課題を突きつけられた感じが(笑)。まあ、でも、やり切るしかないですね。
山下:一番大変なのは、プライドを持ってる人たちだよね。それを、どうやって貫いていくのか。そんな“場”をつくってくれる業界であればいいよね。でも、古いメディアはもうあてにならない。だったら、自分たちでつくるしかないんじゃないの。だって、見ててもさ、「見たくもねえよ、こんなの」ってものばっかりじゃん。
一同爆笑
石原:乗ってきましたね。
髙田:お酒、まだ入ってないよ(笑)。
内田:この続きは、また第二回で。今度はちゃんとお酒を入れて(笑)。今日はこの辺で。ありがとうございました!

Special Thanks浦 さやか
プロフィール
Double
代表 山下 浩二(やましたこうじ)
鹿児島県出身。1994年、原宿に『HEARTS』をオープン。2001年からは表参道に『Double』を構え『HEARTS』『Double』の2ブランドで美容活動を展開。現在は「Double」「Double SONS」の2ブランドを展開中。独自のデザイン・カットテクニックで「本物」のスタイルを表現。業界誌はもちろん、美容師からの信頼も厚く常に業界をリードする存在としてTOPを走り続ける。自身の著書『山下浩二のたねあかし』(髪書房)、『山下浩二のカット本』(新美容出版)をバイブルとしている美容師も多い。
TOH
代表 石原慎太郎福岡県出身。福岡美容専門学校卒業。HEARTS/Doubleに入社し22年間在籍。アートディレクターや店長などの要職を務める。業界誌、一般紙などのメディア露出も多数。2021年独立し、表参道にTOHをオープン。
tender
代表 髙田昌宏
HEARTS/Doubleに入社し、山下浩二さんのイズムを受け継ぎ24年に渡り活躍。メンズヘアの名手で、業界誌でも多く撮影を行っている。そのクリエイティブで、美容師からも一目置かれている存在。2021年に独立しtenderを立ち上げる。
内田聡一郎/『LECO』代表
soucutsの庭ホスト
2003年より原宿のサロンでトップディレクターとしてサロンワークをはじめ、一般誌、業界誌、セミナー、ヘアショー、著名人のヘアメイク、商品開発など様々な分野で活躍。2018年 渋谷にLECOをオープン、2020年 セカンドブランドQUQUを、2025年には別ブランドとしてØØnをオープン。
現在渋谷1丁目に5店舗を展開。
代表として今後一層の活躍が期待されている。著書「自分の見つけ方」(2013年)、「内田流+αカット」(2017年)、「内田本」(2018年)を発売。また、シザーやシザーケースなどのオリジナルプロダクトも発売中。
(文/リクエストQJ編集部 撮影/菊池麻美)