ネットで拾える情報からは真のクリエイションは生まれない? une 渡邊なつきさんの「ブレイン解剖」
“自分らしさ”はどう育てる?

「“自分らしさ”って何だろう?」と考える人は多いと思いますが、考えてもなかなかわからないですよね。私の場合は、自分が好きな写真や雑誌の切り抜きをブックに集めていて、今でもことあるごとにそれを見返します。雑誌の切り抜きは小学生の頃から集めていたので“好きなものファイル”は本当にたくさんあるのですが、愛媛から沖縄、そして東京と生活の拠点が変わる中でもずっと処分せずに大切に取ってあります。作品作りで困ったときには、それを見ることでアイデアが湧いてくるんです。

私は、「自分らしさってなんだろう」と思い悩んできたというより、作品作りを続けてきた中で、周りから「なつきさんっぽいね」と言われるようになったことで“自分印”を意識するようになったタイプ。それでも、その時々で迷うことはあったように思います。そんな時に私がやっていたのは、例えば、惑星の図鑑を先輩に見てもらい「私っぽい惑星ってどれだと思いますか?」と理由込みで聞いてみることです。他社の目線を借りて自分がどう見えるのか聞いてみる方法は意外と有効で、参考にしていました。

あとは、あえて自分が選んでこなかったものを取り入れてみて、自分がどう感じるかを確認したりもしました。例えば、コンテストや業界誌では、必ずテーマがあります。それが自分がやったことのないテーマな時こそ、私はすごく楽しいんです。自分が思いもしなかった新しいものに挑戦していくことは、”自分らしさ”を見つけることに繋がっていく気がします。
#なつきの物語ヘアー が生まれた経緯と、今後の目標

子供の頃に見ていたテレビ番組に街の人を変身させる企画があって、私はそれが大好きだったんです。去年、ふとそのことを思い出したんですよね。以前、私自身も街でハントされて雑誌『GINZA』の変身企画に見開きで掲載していただいたことがあったのですが、その時の経験もすごく感動的で。私もそういうことがしたいなと思って、インスタ上で「物語ヘアー」という企画を始めました。“物語ヘアー“というワード自体は昔から使っていたので、それを活かして人それぞれのパーソナリティをイメージしたヘアスタイルを作りたいなと思い、ひとつの挑戦としてスタートしました。
第一弾のモヒカンの方は、実はもともとロングだったそう。でも病気の治療で髪を剃らないといけない状況になり、ロングを惜しみながらもモヒカンにしたらしいのです。そんな事情を一切知らない私が「すごくかっこいい」と褒めていたら彼女が涙を流し始めて…。驚いて話を聞いたら「ロングヘアの自分が好きだったけど、そんな風に褒めてもらえてとても嬉しい」と話してくれました。そこにも物語がありますし、出会いにもライブ感があって、この企画には美容師としてすごくやりがいを感じています。

去年と今年は、コンテスターのvetica阿部力くんと、京都・MARAIS(マレ)山中さんと作品撮りをしました。この二人とは作品をより良くするための言葉をかけあいながら作れるので、すごく楽しい時間を過ごしています。常に自分の内面を磨いて挑戦している人たちで勇気をもらえますし、とても刺激を受けます。実は、私は “やりきった感”があってコンテストに出るのを一旦やめていました。でも「あの場所が大好きだったな」という気持ちを思い出していた時に、2人に影響を受けたことでまた出場したいと思うようになりました。目指しているコンテストは決勝戦がヘアショーなので、お店のスタッフの皆にもアドバイスをもらい、また新たな視点で何か作れたら楽しいかも…と考えていて。近い将来、また優勝を勝ち取りにいきたいですね。

- プロフィール
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une/HOUNE
スタイリスト/渡邊なつき(ワタナベナツキ)
愛媛県生まれ。沖縄の琉美インターナショナルビューティカレッジ卒業後、沖縄県内1店舗を経て27歳で上京。2012年、都内サロンに入社。独創的なクリエイションによりさまざまなヘアコンテストで好成績を収め、トロフィー20個以上獲得という功績をもつ。セミナー講師、業界誌やテレビなどメディアでも活躍。2021年フリーランスになり、2023年よりuneに在籍。
Instagram:@natsuki.une
(文/織田みゆき 撮影/松林真幸 MIKAN inc)
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