「辞める勇気もなかった」20代を越え、自分の心に素直になれた。フリーランス美容師 平山栞さんの30代の選択―天職WOMAN―
誰かの評価より、自分の心に素直に。美容師として生きていくために

30歳を迎えたのをきっかけに、自分の時間をうまく使って仕事をしたいと思い、フリーランスに転身しました。前社に不満があったわけではなく「30歳という節目のタイミングを逃したら、この先ずっと変化のない人生になるかも」と思ったんですよね。
会社という後ろ盾がなくなることは正直、不安もありました。でも、SNSでの個人ブランディングが強い時代になっていましたし、実際に私のInstagramのスタイルを見て来店してくださるお客さまも多かったので、「自分の力でもやれるはず」と自分を信じてみることに。
独立してみると、それまで会社やバックオフィスがやってくれていたことがどれだけ大きかったか身に沁みましたね。加えて、サロンに所属しているときは、自分より若いスタッフが多かったのでユースカルチャーに意識せずとも触れることができていましたが、同世代が多い今のシェアサロンでは、自ら若者の情報をキャッチする必要性が出てきました。トレンドに乗り遅れてはいけない、という焦りも感じますね。
ただ、大変なこともある一方で、時間の自由は大きな魅力です。最近は、熊本の祖母の家に1週間ほど滞在したり、韓国旅行をしたりと長期の休みも取れるようになり、仕事以外の時間がモチベーションにつながっています。

今作っているスタイルは、カラーもスタイルもお客さまへの似合わせを考えつつ、再現性のあるものを提案しています。スタイル写真はコンスタントに発信しているものの、実はSNS自体は苦手で、とくに自分の写真を上げるのにすごく時間がかかるタイプ。投稿したいと思っていた内容を溜め込んで、結局上げられずに終わることも多々あります(笑)。でも、最近はデジカメを買ったので、それを使って気分転換しながら、ファッションとヘア、メイクを含めたライフスタイルの投稿を目指していますね。
若手の頃は、人と比べることで自分の存在価値がわからなくなってしまうことがあったとお話ししましたが、年齢を重ねたら重ねたで、「私はいつまで美容師として必要としてもらえるだろう」という悩みにシフトしていきます。そういう時、昔は、バズったり、誰かに評価されたりと外側からの声で自信を取り戻す傾向がありましたが、今はそうではなく、自分の気持ちやライフスタイルを大切に、バランスをとって仕事を続けたいと考えるようになりました。

SNSも同じで、これまでは挑戦したいスタイルやファッション、メイクがあったりしても、外からの評価を気にして自分にブレーキをかけていたんですよね。でもこれからは、そうやってブレーキをかけていたことにも挑戦したいと思っています。外からの評価ばかりを気にするんじゃなく、自分の心に素直に。「まあ、いいか」と自分に優しくなれたとき、新しい扉が開いていく気がしています。そして、その新しい自分のことをお客さまに気に入ってもらえることこそが、この先も長く美容師を続けていける自信につながると考えています。

- プロフィール
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SALOWIN渋谷me+店/平山 栞(ひらやま しおり)
東京都出身。ハリウッド美容専門学校卒業後、都内の有名サロンに入社。31歳のときにフリーランスに。トレンド感がありつつもかわいらしいスタイルが20代の女性から支持を集める一方、自信のライフスタイルも注目を浴びる。
Instagram:@shiori__hirayama
(文/須川奈津江 撮影/菊池麻美)
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