テラタビスト吉田さらささんに聞く!  美容師パワースポット

信仰の強さを示すために髪の毛で仏さまの名を刺繍

 

7.5写真剃髪堂側面+東塔nakanobo-toutou

 

 髪の毛と信仰心と言えば、中将姫のお話も印象的です。中将姫は8世紀に生きたとされる伝説上の人物で、美貌と才能に恵まれたお姫さまでした。しかし継母に憎まれ、命さえ狙われるようになりました。やがて中将姫は心静かに仏さまに祈りたいと考えるようになり、奈良の二上山の麓の當麻寺 中之坊というところで髪を剃って尼僧になりました。

 

写真8當麻寺中之坊の正面nakanobo-shoumen

 

そのとき剃り落した髪の毛を糸にして、阿弥陀如来、観音菩薩、勢至菩薩の梵字(サンスクリット語の文字で、それぞれの仏さまを表わす)を刺繍したと言われます。

 

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中将姫が髪を剃り落したのは6月15日、仏さまの梵字を刺繍したのは6月16日とされるため、毎年6月16日には、当麻寺内の中之坊というお寺で「中将姫髪供養会」が行われます。ここでは自分で髪の毛を少し切り、髪塚にお収めします。女性にとって、髪の毛がどれほど神聖なものであるかが伝わってくる行事ですね。

 

写真10参拝者がお供えする髪を切る儀式

 

 

逆毛に悩むお姉さんのためにかつらを作ってあげた

 

11写真王子神社本殿

 

 東京にあるお勧めの神社は、JR王子駅近くにある王子神社。イザナギノミコト、アマテラスオオミカミなどの有名な神々を祀る神社ですが、境内にある関神社という末社(主祭神とは違う神さまを祀る小さな神社)と、毛塚と書かれた石柱も見逃してはいけません。ここには、百人一首などでも有名な蝉丸法師、そのお姉さんである逆髪姫、侍女の古屋美女が祀られています。

 

12写真王子神社末社関神社

 

蝉丸法師は、逆髪に悩むお姉さんのために、侍女に命じてかつらやかもじを作らせました。逆髪とは、今で言うくせ毛のことでしょうか? 昔は、まっすぐな黒髪が女性の美の条件とされていましたから、逆髪姫の悲しみはさぞ深かったことでしょう。それを助けた弟と侍女は、少しでも美しくありたいと願う女性のために働く美容師さんの鏡。ぜひこちらにもお参りして、パワーをもらってくださいね。

 

まとめ

各地の髪にまつわるパワースポットを訪ねてみると、昔の人にとって、髪がどれほど大切なものだったかがわかります。美容室では捨ててしまう切り落とした髪の毛が材木を運ぶ綱になったり、仏さまの名を刺繍したり。この機会に、日本文化の中で髪がどんな意味を持っていたかも勉強してみると面白いかも知れませんね。

 

プロフィール
吉田さらさ(寺と神社の旅研究家)

寺、神社、仏像、神道などをテーマに、雑誌記事や単行本を執筆。各種講座の講師、講演会、ツアーの企画と同行説明なども行っている。「奈良 寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など、著書多数。

 
吉田さらさ公式サイト
http://home.c01.itscom.net/sarasa/

 
吉田さらさのイベントとお知らせ
http://sarasa77.hatenablog.com/

 

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