「人間くさいサロンでありたい」。ボトムダウン型組織のブレない芯―10年サロン「Belle」のブランディングストーリー後編

2017年〜現在 ブランディング拡張期

百貨店より専門店の時代。だから、お店のコンセプトも明確に

 

ファミリー層をターゲットに据え、「地域密着」をコンセプトにした吉祥寺店。

 

2017年には吉祥寺に新たな店舗をオープンしました。これまでとはまたまったく違うエリアに出店したのは、店舗ごとにそれぞれのカラーをつけていきたいと思ったからです。今は情報が増えて、みんな百貨店よりも専門店に行く時代。美容室も、お店ごとにコンセプトを持って集客していくことが重要だと考えたんです。

 

吉祥寺店のコンセプトは「地域密着」。吉祥寺に住んでいるファミリー層にきてほしいと思って出店しました。僕自身、専門学校が中野だったので吉祥寺はよく知っていたんです。吉祥寺の特徴は、おしゃれなファミリー層が多くて、この街の中であらゆることを完結させる人が多いこと。洋服屋やサロンもたくさんあって、何でも揃うので住んでいる人はこの街からあまり出ないんです。こうしたファミリーにアプローチできるお店を作ろうと「お子さまと一緒の来店でお子さまのカットは500円」などのキャンペーンを行っていました。

 

懸念していたのは、今までの店舗とやり方がまったく違うので、スタッフが興味を持つかということ。原宿や表参道のようなエリアで働きたくて美容師になったスタッフが多いですし、少し外れた吉祥寺で働くことは想像しにくかったと思います。実際、最初はなかなかスタッフから手が上がりませんでした。声をかけたのは、「環境が変わったらもっと伸びるんじゃないか」という可能性を秘めた子たちです。ファミリー層の接客に強かったり、年上のお客さまにしっかり対応できたりするスタッフを選び、僕たちの考えをしっかり話して行ってもらいました。

 

もしかすると、最初は乗り気ではなかったかもしれません。しかし、吉祥寺店に移ったスタッフは売上が大きく上がりました。本人たちのモチベーションにもつながって、今ではすごく感謝されるほど。そして彼らが結果を出したことで、「自分も吉祥寺で働いてみたい」というスタッフが増えました。吉祥寺店のオープニングが苦戦していたらこうはならなかったと思うので、いいサイクルを作ってくれたと思いますね。

 

新たな層の開拓に成功。年齢の高いお客さまは、一度気に入れば長く通ってくれる

 

2018年にオープンした銀座エリア2店舗目となる、銀座5丁目店。

 

2018年には、銀座エリア2店舗目となる銀座5丁目店をオープンしました。三越とGINZA SIXに挟まれた立地で、イメージしていた客層は40〜50代。このエリアは美容にきちんとお金をかける人がたくさん集まり、美容室の数も多い激戦区です。銀座並木通り店よりももう少し年齢層が高い人にも『Belle』を知ってほしいという想いからオープンしました。

 

銀座5丁目店はこれまでで一番年齢層の高いお店なので、集客のやり方はこれまでとは少し違いました。他のサロンと違ってネットやSNSで美容室を決める人が少なく、来店のきっかけは口コミや紹介がメイン。そのためお客さまの数が安定するまでには時間がかかりました。ただ、一度気に入ってくれたら長く通ってくれるのが、この年代の特徴です。今は他の店舗と変わらないくらいお客さまがついてくれているので、新たな層を開拓できたと思っています。

 

ボトムアップの経営方針。美容室はスタッフがいなければ成り立たない

 

 

現在『Belle』では5店舗を展開しています。店舗の数が増えるにつれて、僕たちがすべてを見るのは難しくなってきました。スタッフを教育してまとめていくうえでは、各店の店長の存在が重要です。スタッフの声を店長が聞いて、それを僕たちに伝えてもらっています。もちろん、僕たちも意見を伝えますが、組織が大きくなってきたときにはいかに下から意見をもらえるかが重要だと考えています。トップダウンより、ボトムアップが大切なんです。

 

例えば、トップの僕が「こうしたほうがいい」と言えば、すぐにそうなるでしょう。でも、アシスタントもみんな考えながら働いていて、一人ひとりに意見がある。そこから僕らよりもいい意見が出てくることもあるので、それを逃さないように、しっかり耳を傾けたいんです。

 

また、美容室はスタッフがいないと成り立ちません。美容室が潰れるときは、お客さまがいないことが要因なのではなく、スタッフが辞めて経営がまわらなくなるからだと思うんです。だから本当に「人を大切にする」ことがすべてだと思っています。

 

現在は僕と堀之内に冨山を加えた3人が代表を務めていますが、それぞれに役割分担をしています。具体的には、僕はブランディングや数字を見て、堀之内がスタッフの教育やモチベーションのケア。冨山は技術面を見てくれています。こういった役割分担は、共同経営の強み。僕一人だったら絶対にこんなにできないので、一人でサロンを経営している方は本当にすごいなと思います(笑)。

 

>「『Belle』の出店は多くてあと数店」。その発言の意図とは?

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