方針を変えたのは店を守るため。悪戦苦闘の中で、ずっと自問自答を重ねてきた―10年サロン「SORA」のブランディングストーリー前編

2002年〜2003年 スタートアップ期

順風満帆ではないけれど、「人」に恵まれたオープン前

 

 

『SORA』は金子利彦(かねことしひこ)、山根栄有(やまねえいゆう)と僕の3人でオープンしたサロン。年齢も近くて、もともとみんな同じサロンで働いていた仲間たちです。30歳を迎えるころ、それぞれに組織と噛み合わないところや、このままでいいのかなという気持ちが生まれてきていました。それで、「自分たちで店をやってみたら理想に近づけるんじゃないか?」と思ったんです。

 

当時はカリスマ美容師ブームも終わったころで、僕としても「これからは組織力の時代だ」と思っていました。当時、共同経営は少なかったと思いますが、1人よりも3人のほうが強い組織にできると感じていましたね。

 

しかし、出店までは決して順調ではありませんでした。オープンの話がまとまらないうちに、3人とも務めていたサロンを辞めなくてはならないことになったんです。まだ物件も決まっていなかったので、焦りました。当然、お客さまの情報も引き継げないし、スタッフを連れて行くこともできない。やることが山積みだったんです。

 

ただ、そんな中でも「人」に恵まれたことが救いでした。働いていたサロンからスタッフを連れて行くことはできなかったのですが、僕たちに着いて行きたいと言ってくれるスタッフがたくさんいて、彼らが知り合いを紹介してくれたんです。おかげで、お店の場所さえ決まっていないのに採用はとんとん拍子に進みました。近くのカフェで面接をして、窓の外を指さしながら「あそこでやれたらいいと思ってるんだよね」と話したりして(笑)。物件が決まる前なのに、スタッフは6人ほど決まっていました。

 

オープン後の危機。集客に苦戦し、店を外から眺めながら考え込んだ

 

2002年SORAオープン当初の様子。

 

なんとか希望物件の契約が決まり、急ピッチでオープン準備を進め、2002年6月26日に『SORA』広尾店がオープンしました。

 

最初はオープンを待ってくれていたお客さまがたくさんきてくれたので、7月いっぱいは目が回る忙しさでした。スタッフはたくさんいたけれど、一緒に働くのは初めてですから、なかなかスムーズにはいきません。急いでスタッフを追加で募集して、なんとか乗り切りました。

 

ただ、8月に入ると開店直後の勢いはだんだんと落ち着いてきてしまいました。思いのほか新規の集客ができていなかったんです。当時は本当にお客さまがこなくて、「どうすれば人がくるんだろう」って、交差点の向こうからお店を見つめて考え込むこともありました。

 

しかも、そうしているうちにビルのオーナーさんとトラブルがあり、その物件を出なくてはいけなくなったんです。売上は落ちるし、物件を探さないといけないし……当時はまさにどん底でした。

 

>初の多店舗展開へ。スタッフの統率に悪戦苦闘

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