日本開国の日。東京発「外国人美容師育成事業」がクールジャパンを加速！ 外国人美容師の就労の一部解禁で日本の美容はどう変わる？
誰でも資格取得できるのに、外国人だけ就労できない矛盾
次に、外国人就労実現へ向けての発起人である、東京BAの金内理事長へお話を伺いました。
編集部：金内理事長が外国人美容師の育成について、業界に呼びかけようと思ったのはどうしてですか。
金内理事長：業界に働きかけたのは7年前くらいからです。「外国人美容師が日本の国家資格を得ても就労できないのは矛盾だろう」と感じていました。外国人の美容師さんは日本の美容文化を学びたいから日本に来ています。それにも関わらず、「美容学校を卒業したら帰ってください」というのはおかしいですよね。実際に働いてみないと本当の意味で、日本の美容文化を学んだことになりませんから。そして、なぜ私たちが主体となって働きかけたかというと、外国人美容師に安い賃金で過重労働させるようなリスクを排除したかったからです。もし、そんなことになったら、日本の美容界が、国際的な信用を失ってしまいます。そのような危機感に近い思いから、内閣府と何度もミーティングを重ねて、国家戦略特区（地方創生や経済の活性化、産業振興、国際競争力の強化などを目指し、規制緩和や制度改革、税制優遇などの政策を実施することができる）の特別区域として、東京都が認可されたのです。
誤解されやすいのですが、労働力不足を補うための外国人就労ではありません。日本の技術やソフト・ハードを含めて、日本の優れた美容文化を海外に普及していくことが狙いです。
外国人美容師と自由に契約できるわけではない
編集部：つまり、どこの美容室でも外国人美容師を受け入れられるわけではないのですね。
金内理事長：その通りです。外国人美容師と勝手に契約することはできません。現在、中国人美容師2名、韓国人美容師1名が出入国在留管理庁に承認されて就労を開始していますが、私どもの機関を通してのみ可能となります。また、就労先も「美容に関するクールジャパンの推進やインバウンドの需要への対応に資する人材育成に必要な事務を実施するもの」として、関係自治体に対し確認の申請を行い、要件を満たさなくてはなりません。そのため、受け入れ先も限られています。
美容業界で、令和の文明開化を起こそう
編集部：この取り組みを通じて、金内理事長はどんな未来を思い描いていますか？
金内理事長：日本の美容文化は世界トップレベルと言われていますが、生産性はアジアでも低いほうなんですよ。美容師の報酬も同じです。韓国に抜かれ、中国に抜かれ…という状態。厳しい言葉を使うとね、日本の美容は、外国人美容師を締め出す鎖国状態だったから、競争原理が働かなかったのではないかと思っています。だからこれから日本の美容文化は、世界に向けて開かれるべき。かつての日本が開国して文明開化が起こりましたが、それと同じことが美容業界で起こりうると思います。外国人美容師は安価な労働力ではなく、日本の美容文化の価値を高め、生産性を高めるための存在だと捉えています。そして、彼・彼女らのハングリーさに、日本人美容師も刺激されるはずです。
編集部：外国人美容師を受け入れることになるかもしれない美容室経営者には、どんな心構えが必要でしょうか。
金内理事長：日本の美容を誇りに思うことは否定しませんが、間違っても外国人美容師に対して上から目線で接してほしくないです。育成事業である以上、しっかりと育て上げていただきたい。生活面、技術面でのサポートも不可欠です。大変なことですが、日本の美容に貢献する大きな一歩になると思います。
TAYA池袋店
尚海儀（ショウカイイ）さん
上海出身。岡山県の高校を経てハリウッド美容専門学校に入学。卒業後、国家戦略特区外国人美容師育成事業の第一号として、TAYA池袋店にて活躍中。趣味は映画で、宮崎駿をリスペクトしている。
TAYA
テクニカルプロデューサー 佐藤 哲忠さん
北海道出身。ハリウッド美容専門学校卒業。パリコレクション、東京コレクションバックステーに参加。WWD HAIR DESIGNERS CONTEST MAC賞、TAYA全店コンテストグランドチャンピオンなど国内・国外の数々のコンテストでの優勝・入賞多数。ベーシックカットからクリエイティブなデザインまで、撮影、 セミナー、ヘアショーと、果敢にチャレンジし続けるビューティアスリート。
東京都美容生活衛生同業組合（BA東京）
理事長 金内光信さん
第8代理事長に就任以降、美容業界発展のために努める。2018年に設立された、亜細亜理美容振興協会の初代代表に就任。外国人美容師の就労に向けて、美容業界、内閣府、東京都に働きかけた。
（文／外山武史 撮影／松林真幸）
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