GOALD中村トメ吉×松本拓馬スペシャル対談【前編】 運命は再び交わる。松本拓馬、GOALD移籍の真意。中村トメ吉に導かれた挑戦の原点「第二章」

中村さんの技術を見て、「美容師としてのあるべき姿」を確信した

 

 

―中村さんは、松本さんのことを特別に目をかけていたんですね。

 

中村:彼はこのキャラクターなので、フロアでもプライベートでも基本的にエンターテイナーなんですよ。根は真面目ですし、期待していたことは確かです。でも、口を開くとビッグマウスだから、「言ったからにはやれよ!」といつも追い込んでいましたね。

 

松本:まだアシスタントなのに根拠のない自信だけはあったんですよ。僕は技術を極めるという覚悟で有名サロンに入社し、そこでナンバーワンになるという目標を持っていました。「うまい美容師がたくさんいるサロンでナンバーワンになったら、世界一になれる!」と意気込んでいたんですよね。

 

中村:サロンでナンバーワンになったら、もういきなり世界一なんだ(笑)。

 

 

松本:当時から中村さんの技術力と再現性は群を抜いていました。しかも、感覚的ではなくてものすごく理論的。今でこそカット技術の本も出していますが、そこに書かれてある内容の多くは、実はその当時からすでに確立されていたんです。

今はSNSや動画を通して、誰でも簡単に技術にアクセスすることができる時代になりました。でもあの頃は、特にメンズのカット技術を体系的に学ぶことは簡単ではなくて。そんな時代に、「今にも通じる普遍的な理論」を確立していたって、すごいことですよ。

 

自分が美容師になる前って、「この髪型にしてください」って美容室に写真を持っていっても、全く同じにならないことが当たり前だった。「そういうものなのかな」って思っていたけど、よくよく考えたら注文されたものを提供できないのって、プロとしてどうなの?と感じたんです。「自分がそれをできるようになったら絶対売れる」と確信しました。

それで、中村さんをはじめうまい人を見て、美容師のあるべき姿はこれだ!と心の底から思ったんです。

 

 

中村:俺は自分の頭の大きさにすごくコンプレックスがあって(笑)。だから学生時代からヘアセットには命をかけていたんだよね。自分の頭をいろいろな角度から見て、「どうしたらバランスが良くなるのか」を研究していました。そのうちに、その感覚を理論化して、完成像から逆算して作っていく方法を考えていたの。いわば「逆算の教科書」を自分で作ったんだよね。細かいことを考えて計算して、理論の末に理想のスタイルが完成する、というアプローチが好きだったんですよ。

でも、なぜそういうことをするようになったかというと、自分には、それこそ感覚的でクリエイティブではない、って思っていたから。だから感覚より理論で勝負するしかなかったんですよね。

 

松本:よっ! 努力の天才!! 本当に、その教科書があるから、スタッフも安心してカットを学べる。ちゃんとした説明書さえあれば誰でも切れるし、セットできるんですよ。たとえば、サロンワークでも撮影でも、なんとなくスタイルが決まらないときってあるじゃないですか? そういうときは、教科書を見かえすと、どこがズレているのかがすぐわかるんです。感覚派の人って、自分では理解できても、それを後輩に言語化して伝えることは難しい。だからこそ中村さんの理論が必要とされるんです。

僕がアシスタントの頃についていたスタイリストは、まさに天才肌の感覚派でした。だからその人の感覚的なところと中村さんの理論的なところ、その両極から学ぶことができた。それはすごくラッキーなことだったと思います。

 

―その後、中村さんは業界外からも注目される存在になり、やがて退社してOCEANを立ち上げました。中村さんは退社する際に「松本さんがいるから、安心して卒業できる」という言葉を残したと聞いています。

 

 

中村:松本はどこまでも伸びるだろうと思っていました。人間的にも面白いですし、技術が大好きだし、根は真面目で誠実ですからね。

 

松本:中村さんの最終日、「お前に任せた」「お前なら一番になれるから」と言い残して店を出られたのを覚えています。僕はまだスタイリストになりたてでしたが、その言葉があったから責任感や使命感が生まれて、「このサロンを引っ張っていこう」「何者でもなかった自分が、このサロンに必要なんじゃないか」と考えるようになったんですよ。それこそ、中村さんと新サロンを立ち上げたメンバーから、「松本もこっち来いよ」と誘われることもあったんですよ。でも、俺はこのサロンで中村さんに言われた責任を果たしていこうという気持ちで10数年間突っ走ってきました。

 

>中村さんから任された責任を果たすため!? 走り続けて得たカリスマの地位

 

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