sténからTielyへ。金内柊真が挑む、新たな可能性とSNS集客へのアンチテーゼ

お客さま目線で徹底的にこだわったお店づくり

 

 

Tielyは、sténと床面積がほぼ同じなんです。ただ、sténに比べると少し天井が低くて。なので、内装は『圧迫感を取り除くこと』と『シンプルながらも柔らかく、お客さまに安心してもらえる空間作り』を意識しました。

 

まずこだわったのは天井。スケルトンにして白を吹きつけることで、空間の圧迫感をなくし、広がりを感じられるようにしています。アーチ型の通路も特徴的で、お客さまがサロンに入ってすぐ奥まで見通せるような設計にしました。これも、閉塞感をなくし、居心地の良さを大切にしたかったからです。

 

全体的に丸みを帯びたデザインで、女性的でやわらかな印象に仕上げました。レセプション兼カラーブースの天板は特注で作成したものです。

 

 

店内の照明もこだわりの一つで、青白すぎず、ほんのりオレンジを感じる白光を選びました。自然光に近い色にすることで、昼も夜も仕上がりの見え方がほとんど変わりません。カラーの見え方にも影響のない範囲で調整していて、むしろ仕上がりがより自然に見えるとお客さまからも好評です。細部までとことんこだわって作り上げた空間で、日々お客さまをお迎えできることが何より嬉しいですね。

 

正社員雇用のsténに対し、業務委託もできるTiely。社内で働き方の多様性を選べる形に

 

 

現在のスタッフ構成は、オーナーである僕と業務委託の女性スタイリスト1名、それに中途と新卒でアシスタントの採用が決まっています。

sténのスタッフが全員正社員での雇用なのに対して、Tielyでは社員と業務委託、どちらの働き方も選べるようにしました。出勤の自由度を高めることで、ライフスタイルに合わせた働き方を叶えたいと思っています。sténで社員から業務委託になりたいスタッフが出てくればTielyに移動してもらえばいいですし、社内で流動的に動ける道を作ることで、長く働き続けられる環境にしたいですね。

 

教育に関してもsténと同様に、上の立場である自分たちからスタッフに何かを強要することはありません。先程お話ししたSNSでの自己集客もそうですし、レッスンに関してもスタッフの自主性に任せたいと考えています。

 

 

実際にsténでは、1カ月ほどレッスンを休んでいたスタッフがいました。正直、それまでの自分の経験に照らし合わせると、一度歩みを止めてしまったらその後に戻ってくるのは難しいだろうと思っていたんです。それでも、練習をするもしないもスタッフ自身が決めること。そう思って静かに見守っていたら、ある日レッスンを再開してくれたのですが、そこからの活躍が目覚ましいんですよ。本当に嬉しかったですし、このやり方も間違ってはいなかったんだな、と自信をもらえました。

 

スタッフに負担をかけたくないと思うと、経営者としてやらなければいけないことは増えるものです。オープンして間もない今は、スタッフに心配されるくらい働いていますが(笑)、歯車さえ回り始めれば少し楽になるはず。ペースを掴むまでは全力を注ごうと思っています。

 

 

スタッフファーストの思いは変わりませんが、僕自身のキャリアもまだ道半ば。実は、かつては「35歳くらいで美容師を辞めて、経営に軸足を移そう」と思っていた時期もありました。僕自身、体力がある方ではないので「何歳まで続けられるんだろう」と不安を抱えていたんですよね。でも、美容師をやればやるほどに「もう少し続けたいな」という気持ちが強くなって、最近は「何歳で辞めたい」と考えることはほとんどなくなりました。それは、自分のペースで働けば長く続けられる、ということが経験していくうちにわかってきたからだと思います。Tielyやsténのスタッフには、僕と同じような不安を抱えてほしくないので、このサロンをオープンしたという面もあるんです。

 

“業界を変えたい”なんて大きなことを言うつもりはないですが、自分の目の届く範囲のスタッフやお客さまを幸せにしたいという思いはずっとあって。そのための環境を整えるのが、僕の役割だと考えています。一緒に働く美容師さんたちには、幸せな美容人生を送ってほしいんですよね。

 

 

「Tiely」という店名には、“結ぶ”と“始まり”という二つの意味を込めました。人と人の縁を結び、ここを出た瞬間から新しい自分が始まる。働く側にとっても、お客さまにとっても、この場所がそんなきっかけになるといいと考えています。

 

プロフィール
Tiely 代表/金内柊真

東京総合美容専門学校卒業。2017年『ALBUM』に新卒第1期生として入社。アシスタントながら2018年8月に『才能が無ければその分努力すればいい』(KADOKAWA)を上梓。2019年11月にスタイリストデビュー。1カ月後の12月にALBUM銀座店の副店長就任と、話題に事欠かない次世代美容師。フェミニン感のあるスタイルが得意。エグゼクティブスタイリストなどを経て、2023年8月に原宿に「stén」を、2025年9月に2店舗目をなる「Tiely」を立ち上げる。

Instagram:@kaneuchi_toma

 

(文/須川奈津江 撮影/菊池麻美)

 

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