結局、美容師に大事なのは「技術」か「生き方か」? ワタロー×内田聡一郎の価値観バトル【後編】
経営者に憧れる美容師に否!? 「だったら、美容師じゃなくてよくない?」

内田:ほかにも、ワタローはこの場を借りていろいろ言いたいことがあったんだよね?
ワタロー:今はすごく独立するのが早いじゃないですか。若手美容師でも早々に経営者になる夢を見ているのが……嫌なんですよ。美容師としてのスタートはお金がないし貧乏だから売れるスタイルを作らなきゃ、売れたい、って感覚が強すぎて表現者として面白くなくなってしまうのがすごく悲しい。

内田:難しいよね。一番いいのは「楽しくて稼げること」だけど、それがどれだけ難しいことか。でも「楽しくないし稼げない」は最悪だから、なんとか「楽しくないけど稼げる」に持っていこうとするんだよね。人によっては目的と手段が逆になってしまって、「稼げているから、これが楽しい」って感覚になっている人もいる。
あとは、自分が作りたいものじゃなくてお客さまの要望を叶える、流行っているものにコミットする……という軸もあってそれも否定はできないよね。
もちろん「楽しいけれど稼げてない」っていうのもアリで1〜3年目くらいまではそれでもいいんだよ。でも、4年目あたりから「これではやっていけないかも」と気づいて、結局お金を生み出す方にコミットすべき、となる。雇っている側からしても、その人の人生を考えると稼げないままにしておくのは申し訳ないし自己努力のみに任せるのも無責任と感じる。そんな中で、頭のいい人は最初からマーケットに目を向けていて、出口は経営者という美容師さんがいるのもわかるんだよね。
ワタロー:そうですね。そういう人がいてもいいとは思います。
内田:でも、じゃあ俺たちはなんで美容師になりたかったんだっけ?という考えは根本に持っていないといけないよね。

ワタロー:それなんですよ! 僕が言いたいのは「だったら美容師じゃなくてよくない?」ってことなんです。大学出て他の職業に就いたほうがいいじゃんっていう。美容師になったのに稼ごうとしていてなんなの?と思う。
美容師ってお客さまと1対1の仕事ですよ。人と人とのつながりが圧倒的に大きい。目の前のお客さまは思想を持った一人であるわけなのに、マーケティングでものを考えすぎて人のことを数字としてしか見ていないのが本当に嫌だし、数字に憧れているのにも違和感があります。
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