否定され、迷い、それでも信じた 人生を導いた「言葉の羅針盤」 Null代表 松岡諒さんのコトダマ
「最初に地に足をつけた場所がぬかるんでいたら、必ずこける」

美容師として現場に立ち始めた頃、僕はとにかく焦っていました。早く結果を出したい、早く独立したい、早く事業を軌道に乗せたい。そんな焦燥感に突き動かされるまま、フリーランス美容師と経営の世界を同時に歩み始めたんです。今振り返ると、スピードばかりを求めて、足元を見る余裕がなかったのかもしれません。

転機になったのは、LECOの内田聡一郎さんのセミナーへの参加でした。質疑応答の時間に、思い切って手を挙げました。「フリーランスの美容師として現場に立ちながら、企業のマネジメントにも携わっています。この先、どんなことを大切に歩んでいくべきでしょうか?」と。内田さんは僕の生き方を否定するどころか、むしろ「新しいね」と称賛してくれた上で、こういいました。
「最初に地に足をつけた場所がぬかるんでいたら、必ずこける」。
その一言は、当時の僕の胸に深く刺さりました。技術も経験も、まだ十分とは言えない状態で、理想だけが先に膨らんでいた。でも同時に、「じゃあ、どちらかを諦めるべきなのか?」という葛藤もありました。中途半端になるのが怖かったんです。
そして、僕が選んだのは、どちらかを切るのではなく、両方を小さく積み上げることでした。派手な成果は出なくても、確実に地面を固めながら前に進む。その積み重ねが、後になって自分を支えてくれる。転ばないための準備をさせてくれた言葉だと思っています。
「20歳が何を言っているんだ」

20歳の頃、美容業界の課題についてSNSで発信していたときに言われた言葉です。直接言われたこともありましたし、引用リツイートやどう考えても僕をディスっている空リプで遠回しに投げられた言葉もありました。正直、気持ちのいいものじゃなかった。
「年齢で判断されるのか」という悔しさと同時に、「確かに自分には実績がない」という現実も突きつけられました。
当時の僕は、正しいことを言っているつもりでした。でも、正しさだけでは人は動かない。何を言うか以上に、誰が言うか。その厳しさを、身をもって知りました。一時期は発信すること自体をやめ、「何かを変えたい」と思う気持ちすら萎えてしまったこともあります。

ただ、今振り返ると、この経験がなければ、言葉の重みについてここまで考えることはなかったかもしれない。結果を出すこと、行動で示すこと。その積み重ねがあって初めて、言葉は届く。若さゆえにぶつかった壁でしたが、必要な通過点だったと感じています。