December 北田ゆうすけのびよう道 元フリーター、有名店最速デビューからオーナーへ “美容師の夢を守る場所”を自分でつくる

美容室でも待遇や休日が大切と言われる時代です。もちろんそれも良いですが、美容人生のどこかで“心も体も美容でいっぱい”という時期があっても良いかもしれません。
「びよう道(みち)」は、そんな地道で壮大な鍛錬の道を歩んできた“美容の哲人”に、修行時代に一人前になったと思った瞬間や美容の哲学など、それぞれの美容の道を語っていただく連載企画です。
何の目標もないフリーターから美容師に転身し、「最速デビュー」を誓った北田ゆうすけさん。人気店での強烈な修業や葛藤を糧に「顔まわりカット」を武器に成長し、独立してDecember(ディッセンバー)を設立しました。プレイヤーとしてはもちろん、経営者としてもリスペクトを集める北田さんのびよう道を辿ります。
“やめておけ”と言われた夢が再び動き出す

僕が美容師という職業を意識したのは、中学生のときでした。進路相談で「美容師になりたい」と先生に伝えたんですが、そのときに「やめておけ」と一蹴され、夢は一度そこで終わったんです。
そのまま流されるように就職もしないまま、飲食店でアルバイトを始めました。1年はアルバイト、もう1年は社員として働きましたが、正直、毎月の給料をただ遊びに使って、余ったお金で車でも買おうかなと考えるような生活。将来のことなんて全く考えずに、ぼーっとすごしていました。
そんなとき、仲の良いバイト仲間が「美容学校を見学したい」と言うので、僕も一緒についていったんです。そのときに「あ、やっぱり自分は美容師になりたかったんだ」と思い出しました。このまま遊んで終わりたくない、ちゃんと夢を叶えたいと思って、美容学校に入学したんです。

美容学校に入ってからは、とにかく必死でした。フリーターとして過ごした2年間を「失われた時間」だと感じていたので、それを取り戻すために全力で取り組みました。授業も課外授業も全部参加して、夜は学費のためにアルバイト。遊んでいた2年間を取り返すように、生活のすべてを美容に注ぎ込んでいたんです。
失われた2年を取り戻すための「最速デビュー」宣言

有名店に入って僕が最初に掲げた目標は「歴代最速デビュー」でした。当時、そのサロンでは4年でデビューするのが普通で、一番早い人でも3年半。それを聞いたときに、「自分は3年でデビューする」と決めました。フリーターとして過ごした2年間を取り戻すためにも、最速で結果を出すしかなかったんです。
そのためには、とにかく練習しかありませんでした。夜中の2時まで残って練習していた先輩がいて、僕も同じように毎晩2時まで残るのを当たり前にしました。休みの日もほとんど使ってモデルハントに出て、自由な時間はまったくなかったです。

ただ、幸運だったのは素晴らしい先輩に恵まれたこと。カットに強い人、メイクが得意な人、撮影で活躍している人など、それぞれに違う武器を持った先輩がいて、僕は「全部できるようになりたい」と思って、片っ端から吸収しました。先輩の撮影やヘアメイクの仕事にも同行しました。
ただ、体力的にも精神的にもギリギリの毎日で、眠いまま営業に入ったり、怒られたりすることもたくさんありましたね。でも、お客さまに喜んでもらえる先輩たちの姿を見て、「自分も絶対にそうなりたい」と思えたからこそ、耐えることができたんだと思います。
