「家庭もキャリアも夢も、全部あきらめない」Michio Nozawa HAIR SALON代表・那須久美子が描く、“女性の感性が息づく新時代のサロンへ”

全国トップクラスの進学校から美容の道へ。那須久美子(なすくみこ)さんの人生は、常に「自分の信じた道を貫く」選択の連続でした。両親の反対を押し切って飛び込んだ美容業界で、掲げてきた信条は、“お客さまに愛される美容師であること”。その一心で磨き上げた確かな技術と人間力が、多くのファンを惹きつけてきました。
さらに、長年にわたり野沢道生(のざわみちお)さんの右腕としてサロンを支え、マネジメント面でも手腕を発揮。そして2022年、『Michio Nozawa HAIR SALON』の代表に就任。家庭とキャリアの両輪を回しながら新しい挑戦へと踏み出しました。2児の母として、そして美容師として “あきらめない生き方”を実践する那須さんから、これからの美容師像、そして新しい時代を生き抜くヒントを探ります。
偏差値75の名門校から美容師へ。1年目は1日60人のシャンプー

――全国屈指の進学校から美容師の道を選ばれたそうですね。きっかけは何だったのでしょうか?
高校2年生のときに、勉強に追われる中で、たまたまテレビのドキュメンタリーを目にして。 “介護美容”をテーマにしたもので、一人の高齢女性がヘアメイクをしてもらって、鏡の前で涙を流している様子が目に焼きつきました。「私もこんな風に、人を幸せにできる仕事がしたい」と。あの数分の映像が、美容師への道が開いた人生のターニングポイントでしたね。
それまでは進学校らしく、塾に通って勉強漬けの毎日。おしゃれとは無縁の学生でした。だからこそ、美容の世界がものすごくキラキラして見えたのかもしれないです。もちろん両親には猛反対されました。ですが受験1ヵ月前に土下座して「美容の道に進ませてください」とお願いしました。

――まさに覚悟のスタートですね。
そうですね。当時、その進学校から専門学校へ進んだ前例がなくて、先生も驚いていました。両親からは勘当され、一度は家を出たのですが、最終的に母が「どうせやるなら、お客さまに一番愛される美容師になりなさい」と背中を押してくれて。その言葉に支えられながら、これまでの美容師人生を歩んできました。
――新卒で入社したのは、当時人気No.1といわれた有名店でしたね。
応援してくれた母の期待に応えたいと思ったので、就職活動では、そのサロン一本に絞って望みをかけました。採用倍率がとても高い時代でしたから、かなりの人数が書類選考でふるい落とされます。そこで気合を入れて、自分の履歴書が目立つように“巻物”にして筆で書いたんですよ(笑)。そのまま最終面接に進み、無事に内定をいただけました。入社後は1年間、シャンプーだけの日々。1日60人の髪を洗っていました。体力的にも精神的にも本当に大変でしたが、余計なことを考える余裕もなく、ただ「上手くなりたい」「喜ばれたい」という一心でしたね。振り返ると、あのときの努力が今の基礎になっていますし、自分の限界を超える経験をしたことで、どんな壁にも動じなくなりました。
