“私は天才じゃない”から、誰よりも練習する以外に道はなかった。ブランドサロンでキャリアを築く、HEAVENS・NAEさん ─天職WOMAN─

表参道・HEAVENS(ヘブンス)で活躍しているNAE(ナエ)さんは、サロントップクラスの売上を誇る売れっ子スタイリストです。デビューからわずか3年で店長の座に就き、今年で入社12年目。ブランドサロンでは異例とも言えるスピードでキャリアを築いているNAEさんですが、実は、出世にはほとんど興味がなかったそう。
順風満帆に見える美容師人生の根底にあるという“劣等感”とは? そして、アシスタント時代から弛まぬ努力を続けてきたNAEさんの仕事との向き合い方とは?
「一度も手を抜かなかった」という言葉通り、ストイックな姿勢を貫いてきたNAEさんのこれまでのお話を伺いました。
目標は、どこに行っても美容師ができる自分になること

HEAVENSには新卒で入社して、今年の春で12年目になります。中心地で働くことに強いこだわりがあったわけではないですが、サロンに歴史があり、幅広い技術が身に付く環境を求めた結果、ここに辿り着きました。
私は宮崎県出身で、両親が美容師なんです。幼い頃から父と母が働く姿を見てきて、「地方で美容師をやるなら、オールマイティな技術とカットの上手さが必要なんだな」と感じていました。例えば、東京のレストランだと、オムライスオンリーのお店、ミートソースが美味しいお店…など一つの武器でやっているところもありますよね。
でもそれは、近いエリアに色々な選択肢があるからこそできることだと思うんです。地方では、一つのお店で選択肢が多い方が好まれる傾向にある気がして。

もともと働くエリアにこだわりがなかったからこそ、“どこに行っても美容師ができるようになる”ことが私の目標でした。そのために身につけるべき技術があるのはHEAVENSだと感じて、厳しい環境だということは覚悟の上で飛び込みました。
アシスタント期間を振り返ると…本当にしんどかったです(笑)。もちろん、楽しい瞬間もありましたよ。でも、やっぱりそれ以上に大変だったし、もう一度やれと言われたら絶対に嫌(笑)。
毎日の練習やサロンワークはもちろんのこと、休日もひたすらモデハンをしていたので、休みという休みはほとんどありませんでした。当時はSNSがなかったので、道で声をかけるしかなくて。レッスンモデルに加えて、撮影のためにプロポーションが良くて大胆なスタイルチェンジができるモデルさんを探して…。本当に終わりがなかったんですよね。

ただ、レッスン自体は順調な方だったと思います。一個上の先輩に追いつき、追い抜くくらいのペースで進めていました。それでも、めちゃくちゃ急ぎ足で5年半。長いアシスタント期間でしたが、尊敬する先輩方に認めてほしい、お客さまに選ばれる美容師になりたいという思いでがむしゃらに駆け抜けましたね。
身近な天才たちに近づくために、手っ取り早いのは努力だった

私は、器用だけどセンスはないタイプ。例えば、撮影で“ダサくない衣装”を組んだり、トレンドをキャッチしてまとまりのあるヘアを作ることはできるんです。でも周りには、私には到底思い付かないようなバランスなのに、不思議とかわいくて目を惹く衣装やヘアを作る人たちがいる。
それは、勉強してなんとかなるものではなくて、いわゆるセンスや感覚と呼ばれるものですよね。そういう天才肌の人たちを間近で見たからこそ、「私も何者かになれるかも」という感覚は早い段階で捨てました。
そこからは、もう本当に必死です。そういう人たちより1時間でも長く練習すれば、私にも何かが見えてくるかも、と朝も夜もずっと練習していました。夜遅くまで残る美学なんてもう古いと思いますが、私がなりたい自分を叶えるためには、それが一番手っ取り早かったんですよね。ずっと抱えてきた劣等感こそが、私のパワーの根源でした。

スタイリストデビューの半年ほど前から、SNSにも力を入れ始めました。それが功を奏して、デビュー前からお客さまやモデルさんがコンスタントに来てくれるようになったんです。スタイリストになってからも売上は順調で、調子が良い月だと、お店で1番を獲ることもありました。
ただ、なまじ数字がよかった分、先輩たちからも「謙虚さを忘れないように」と再三言われていましたし、自分でも、できていないことや足りない部分が目に付く日々でしたね。
一番躓いたのは、アシスタントを使って営業を回すことの難しさ。デビュー直後のまだ未熟な状態で、アシスタントに手伝ってもらいながら複数の枠をこなす不安と、フラストレーションは大きかったです。

それでも、売上に伴ってキャリアも少しずつ上がっていって、デビュー3年目には店長を任せてもらうことになりました。あくまで役職上の話にはなりますが、先輩が自分の下の立場になることなど、葛藤はありましたね。若い私が役職に就くことで複雑な思いを抱く人もいるだろうなと。
そういう人たちに「頑張ってるから、NAEなら良いんじゃない」と思ってもらうためにも、ひとつも妥協ができないなと改めて背筋が伸びました。
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