光も影も、自分の表現の糧にする。ØØn 奈津己さんの「ブレイン解剖」

 

トレンドの一歩先を行くクリエイティブを生み出す美容師は、どんなヒトやモノにインスパイアされるのか。クリエイティブな感性を持つ人たちに直撃取材し、紐解いていくのがこの企画「ブレイン解剖」です。

今回は、ファッショナブルなデザインカラーが代名詞のØØn(オーン)で店長を務める、奈津己(なつき)さんが登場。奈津己さんのデザインカラーは、複雑なのにバランスがよく、それでいて少しの毒っ気がある独特の世界観を持っています。

コンテストや業界誌、さらにSNSでも注目を集める奈津己さんのクリエイティブは、どこから生まれているのでしょうか? その根本に迫ります!

 


 

『マレットヘア一択』だった私が、視野を広げた理由

 

 

2年前に取材していただいた時からの変化は、あの頃よりも少しだけ、マレットヘアにこだわらなくなったことかなと思います。もちろん、マレットヘアへの愛は変わらないし、認知を広げていきたい気持ちはありますよ。ただ最近は、もう少し視野を広げてみようと思っているところなんです。

きっかけは、外部のコンテストで出会った中国の美容師さんに「美容師としてお金を稼いでいくなら、再現性のあるものやマスに響くものを作ることはマストだよね」というお話をいただいたこと。その方は、すごくハイレベルで複雑なデザインカラーのスタイルを作るんですよ。そういう、自分と近いジャンルにいる美容師さんからその言葉が出たのを聞いて「確かにそうだよなぁ…」とくらってしまって。

 

 

以前は「私にしかできないものを作りたい」という思いが強く、自分のやりたいことや、表現したいことを優先してヘアを作っていました。それ自体が悪いことだとは思いません。でもその話を聞いて、私には『売れるスタイルを作る』という視点が足りていなかったと気付かされたんですよね。美容師はアーティスト的な要素があると同時に、お客さまへ技術を提供する“仕事”でもあります。だったら、お金や売上のことを切り離して考えるのは違うのかも、と。

 

「自分のスタイルを貫く」と言えば聞こえはいいですが、それはある種逃げでもあるなと思ったんです。もちろん、私の作るスタイルを見た周りの美容師さんやスタッフに「こんなの真似できないよ」と言ってもらえるのもすごく嬉しいので、そこを手放すつもりはありません。

ただ、売れるスタイルを作って勝負した上で、私にしかできないものを作り続ける。それが、美容師として一番かっこいい“あるべき姿”なんじゃないかなって。

 

最近多いオーダーは「ミノカサゴ」?

 

 

スタイル作りのヒントを、なにか一つのものから得ることはあまりないですね。これまでの人生で増やしてきた引き出しから、2つくらいの要素を選んで組み合わせるようにしています。

ただ、ひとつ明確に意識しているのは光。木漏れ日や反射など、ふとしたときの光の表情から着想を得てスタイルを作ることは多いかもしれません。カラーで光を表現するときにやっているのが、あえて塗らないところを作るデザインです。

 

 
 
 
 
 
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抜きっぱなしのところとカラーが入っているところがあることで、奥行きが出たり、そこに光が当たって反射しているように見えたり。目で見た感覚を、髪で表現するのが楽しいんですよね。髪の毛は立体物なので、平面ではできないことをやりたいという思いがあります。

 

あとは、お客さまのオーダーをもとに考えることも多いです。紅葉など景色の写真を持ってきてくれる方もいますが、圧倒的に多いのは生き物。これは私に限らず、「カラーのイメージに生き物の写真を見せられる」という話は美容師さんからよく聞きます(笑)。

 

 

面白いのは、担当する美容師によって、生き物の種類に傾向があること。例えば、浦さん(QUQU 浦さやかさん)のお客さまはアニマル…いわゆる陸上の生物を持ってくる方が多いんですよ。虎とか。その一方で私のお客さまは、圧倒的に海の生き物! 昔はウミウシがすごく多かったのですが、最近だとミノカサゴが増えました。

 

なんでだろう?と思ってたんですけど、最近、自分は青が好きなんだと気づいて。無意識だったけど、デザインに青を入れることが多いんですよね。それもあって、海の生き物の写真を持ってきてくれる人が多いのかもしれません。面白いオーダーばかりで、日々ドキドキしながらサロンワークに臨んでいます(笑)。

 

 

ただ実は、これが最近の悩みの1つでもあって…カラーをオーダーするお客さま側のハードルが、変に上がってしまっている気がするんですよね。というのも、お客さまから「今日は1色ですみません」と謝られることがあるんです。でもそんなの、絶対に謝られることじゃないじゃないですか(笑)!

お客さまが本当にやりたいカラーをやるのが一番だし、なんなら、綺麗なワントーンを作るのってすごく難しいので、デザインカラーとはまた違った面白さがあります。私自身、決して「面白いイメージ写真を持ってきて欲しい」と思っているわけではないので、どんなカラーでも安心してオーダーして欲しいですね。

 

>愛ゆえのスパルタ教育で培った、自分だけの武器

 

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