美容界の「働き方改革推進者」が 迷える35歳男性美容師におくる処方箋

一つの仕事に固執するのは危険

 

 

Q.SNSでの集客など、新しい当たり前に積極的でない35歳の男性美容師にはどんな未来が待っていますか?

 

善上さん:サロンにお客さまがきて、髪を切って、デザインしてお金いただくというサロンワークのルーティンが仕事の全てだと考えている35歳の男性美容師にとっては厳しい未来が待ち受けてるかもしれません。さまざまな業務内容が見直しされ、スクラップアンドビルドが盛んな今の時代において、一つの仕事を続けていくこと自体が大変ですし、その仕事に固執していることが自らの未来を危ういものにする可能性もあります。

極論ですが、「人が髪を切り、デザインする」という仕事そのものがなくなったとしても、お客さまにとって美容師としての存在価値を見出せる人がこれからは求められます。それ以外の美容師は独自のアイデンティティーを確立することができず、不本意な環境で生涯働き続けることになると思います。その未来が良い悪いということではなく、自然な流れなのです。

 

サロンの外でキャッシュポイントをつくれるか?

 

Q.35歳の男性美容師さんが、勤めている美容室で活躍し続けるとしたら、どんな力が必要なのでしょうか。

 

善上さん:美容師としての売上が落ちても、それ以外に売上が作れる能力が必要です。「お店にくるお客さまだけ相手していればいい」という思考では、給料を上げていくのは難しくなっていくと思います。とくに地方都市は少子高齢化、人口減で売上を上げ続けることは年々厳しくなっていきます。また、美容専門学校の新卒者が毎年減っているように、組織の拡大が物理的に困難になってきます。

そういう時代の中で、35歳の男性美容師として活躍し続けるには、過去に培った自分のスキルや知識を、お店のお客さまや美容以外に売る力、伝える力が必要になってきます。美容というカテゴリ、商圏すらも限定せずに、外部にキャッシュポイント(収入源)を作る能力です。競合よりも組織を大きくする力も必要ですが、エンドユーザー(お客さま)を限定せずに個人の「売り幅」を拡大する工夫も欠かせません。

さらにこれからの時代は、一つの土俵で相手を打ち負かす競争意識よりも、新しい土俵を仲間と創る共創意識がより求められてくるのではないでしょうか。

 

東京で開催した美容師向けセミナーの様子

 

「髪を切る、デザインする」だけが美容師の仕事ではない

 

Q.なぜ美容師に、新しい収入源を創る力が求められるのでしょうか。

 

善上さん:ひと昔前は、35歳男性美容師といえば、お店を運営する力が求められていました。人口減のオーバーストアの今では、新しいお客さま、新しい事業を創る力が欠かせません。

美容師は、異業種と比較するとお客さまとの結びつきが強く、また長期的に関係性を持つことできます。その関係性のなかで、個人情報を回収しどんどん蓄積できます。この凄さに気づいていない美容師さんは多いのではないでしょうか。

美を通じてお客さまのライフスタイルをより豊かにしていくことが美容師の仕事だと僕は考えていますが、キャリアのある美容師は、お客さまからさらに大きなモノが求められていると思います。

例えば、地方自治体では、美容師は長時間顧客に接客する特性に着目され、自殺防止の「ゲートキーパー」としても認識されています。それなりに勉強をすれば、ゲートキーパーとしてカウンセリング講座を企画することもできるんです。このほか、全国には保険や車、住宅まで販売する美容師もいます。

「髪を切る、デザインする」だけが美容師の仕事ではないことを認識し、柔軟な思考で一人のお客さまのライフスタイルをより心豊かなものにできるよう、コンサルティングできる能力がある美容師は売れ続けるでしょう。美容業界に限らず大手企業もそういう人材を求めています。「副業」ではなく「複業」できる能力は今後、会社で長く活躍するために必須となるはずです。

あらゆる人とつながる能力、そこからビジネスを創る能力、そして会社や仲間を巻き込む能力。実は、その能力が美容師の可能性を最大化することでもあり、50代、60代と美容師を続けるために必要な能力だと思っています。

僕自身も最初は美容師、そして途中から美容室経営者になりました。今は美容師、美容室経営者、商材開発者、サロンサポーター、ブロガー、コンサルタント……こんな風ですから、子どもたちの友だちや親御さんに、「パパのお仕事は何?」って言われたときに、すぐに答えられないんです(笑)。

僕の仕事が多様化していくのは、「かなり飽きっぽい」という性格の影響もありますが、今の時代にマッチしているではないかと思っています。

 

プロフィール
株式会社ZEN
代表取締役/善上 智博(よしがみ ともひろ)

福岡県北九州市で「HARVESTGARDEN」「FLOWERS」女性専用サロン「ココロニコル」の3ブランドのサロンを展開。サロン経営者、現役スタイリストとして活躍しながら、「レコード式リピート術+未来予測ソフト」を独自に開発。コンサルティング事業を立ち上げ、80社以上のサロンの再生サポートに携わっている。執筆中の「ZENのブログ」がアメブロ「美容師」ランキング1位に輝くなど、全国から注目を浴びている「美容界の働き方改革推進者」。

 

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