LIM 宗悠介さんのびよう道 “模索”が“挑戦”に変わるとき──シンガポールと東京、2度の「ゼロからの再出発」で得た答え

「自分のままでいられる強さ」を、チームのために──COOとしての今

 

 

今、僕はLIMの原宿と表参道、2店舗の運営を任されています。COO(最高執行責任者)として、経費管理、事業計画の立案、チームビルディング、撮影ディレクションまで、現場のすべてに関わっています。

 

それでも僕は「美容師」であり続けたいし、「現場に立つ人間」でありたい。このポジションに就いたとき、「上に上がった」という感覚は、正直ありませんでした。先代たちが次々と抜け、気づけば自分にバトンが回ってきた。全員の投票で選ばれたことには感謝していますが、「他にやれる人がいなかった」という現実も感じていた。だからこそ、引き受けるなら全力でやると決めたんです。

 

ちょうどその頃から、「売上」と真正面から向き合うようになりました。売上が、スタッフの未来に直結する。その重みを初めて実感しました。毎日、売上、客数、リピート率、単価。すべての数字を見て、「どうすれば良くなる?」と自問する日々。正直、苦しかったです。

 

 

でも、ある日ふわっと肩の力が抜けた。「もう、ありのままでニュートラルでいよう」と思える瞬間が訪れました。

全力でやり切って、もがいて、恥もかいて、それでも前に進んできた。その先にようやく、自然体で立てる自分に出会えたんです。

 

堂本光一さんがある番組で言っていた、「究極って抜くことだから。抜いて抜いて無駄を削ぎ落した先に一番美しいものがあるから」という言葉。今の自分には、深く腑に落ちています。突き詰めて、突き詰めて、限界までやった先にしか、“抜ける”瞬間はこない。若い人たちがよく言う“ありのまま”とは全然違う。僕も昔、神戸にいたころは“ありのまま”を履き違えてたと思います。「苦労する」「気づく」、その繰り返しで人は深くなる。ひとつの言葉を人に届けるとき、そこに“深み”があるかどうかって、経験値の差なんですよ。それはAIにはできないこと。表面だけ取り繕っても、本質的なものは伝わらないんだと思います。

 

「いつ美容師として一人前になったか」と聞かれたら、今でも「まだ」と答えるかもしれません。でも、自分が自然体で立てる場所を見つけられたこと。それは僕にとって、確かな変化でした。今は、その「自分のままでいられる強さ」を、チームにも届けたいと思っています。

 

 

人は幸せになるために生きていると思ってる。でも、“本当にそれって幸せ?”って思うこともある。本当にやりたいことから逃げてない?って。東京で美容師をやっているなら、自分とちゃんと向き合って、技術、接客、発信、全部にぶつかっていってほしい。逃げないことが一番大事。点で見ずに、線で、ストーリーで見てほしいんです。

今は、どんな選択も“それもアリだよね”って許されがち。でも「本当にそう?」って問いかけることが必要なときもある。僕は、逃げない人でいたいし、そういう人たちと一緒に歩いていきたい。

 

プロフィール
Dot+LIM
宗 悠介(そう ゆうすけ)

大阪府出身。関西美容専門学校を卒業後、神戸の有名サロンで勤務。その後、LIMの海外拠点であるシンガポール店のスタッフとして参画。約4年間、現地で店長を務めながら、日本と異なる文化・言語環境で技術と接客、マネジメントを体得した。帰国後は東京・表参道のDot+LIMに所属。現在は同エリアのCOO(最高執行責任者)として、サロン運営・教育・採用・撮影ディレクションまで幅広く統括。20年以上のキャリアを通じて、多くの顧客や後進美容師から信頼を集めている。
Instagram:@sosososososososososo

 

(文/外山武史  撮影/菊池麻美)

 

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