MINX池戸裕二のびよう道 売れない30万円スタイリストから取締役へ 自分の概念を壊した先に、次のキャリアが待っている
「店長やらせてください」手を挙げなきゃ何も始まらない

雑誌の仕事も少しずつ増えて、お客さまもやっと安定してきた頃。自分の中で「もっとこの店を良くしたい」という気持ちが強くなったんです。
その頃、僕がいた店舗はフリーのお客さまが全然来ない場所で、とにかく自分で集客をするしかなかった。紹介カードを配ったり、街で声をかけたり、雑誌の現場で知り合った人をお店に呼んだり……。そうやって一つひとつ積み重ねることで、少しずつ売上も上がっていった。
「自分で動けば店は変わる」。その実感があったからこそ、「もっとこの店を強くしたい」と思うようになって。だから、迷わず「この店の店長を僕にやらせてください」って手を挙げたんです。副店長とか順番を待つ気はなかった。待ってたら何も来ない、仕事も役職も自分から取りに行くものだ、ってずっと思ってましたから。

店長になってからは、雑誌や撮影だけじゃなく、スタッフ教育にも力を入れました。自分のやりたいことが明確だったし、「こうすればもっと良くなる」というイメージもあったので、ブレずに動けたと思います。
あのとき、自分で名乗りを上げたことが、間違いなく今につながっています。待ちの姿勢でやり過ごしていたら、きっと今のポジションにはいなかったですね。
半人前のまま走り続けるのが自分のスタイル

たまに聞かれるんですよ。「池戸さんはいつ一人前になったんですか?」って。
でも僕自身、いまだに「カット、上手いな」って思えない時があるんです。正直、まだまだだなって感じてるし、「もっと良くできるはずだろ」って、自分に言い聞かせながら毎日やってます。
初めてセミナーを任されたときなんて、ガチガチに緊張して、4〜5枚くらいの原稿を手書きで持っていったんですよ。今では考えられないですよね(笑)。でも、そのくらい自信がなかったし、「失敗したらどうしよう」って不安でいっぱいでした。
もともと、心配性なんです。だから今でもウィッグを切って、事前にちゃんと準備します。セミナー前も、海外出張の前も、どんなに経験を積んでいても、必ず準備する。器用じゃないからこそ、そういう「積み重ね」でしか自分を安心させられないんですよね。

最近は海外でも仕事をしたり、動画編集にもチャレンジしてみたり。新しいこともたくさんあって、やっぱりその都度「できるかな」って不安になります。でも、不安だからこそ準備するし、向き合える。だから、そこでまたちょっとずつ成長できるんです。
「一人前かどうか」っていうより、「今も成長途中であり続けたい」っていう感覚のほうが強いですね。常に“進化中”であることが、自分のスタイルなのかもしれません。
