びよう道 vol.23  NORA 広江一也さん 〜日本一忙しい美容室で過ごした波乱万丈の日々。理不尽で苦しい時間も、過ぎればおいしい話のネタだ。〜

理解の範疇を超えていたとしても、若い子のやり方を否定しない

 

 

今振り返ると自分の原点は、やはり修行時代にあります。日本一の美容師を間近で見て、「日本一になるには本当にこれだけやらないとなれないんだ」と心底感じていました。真面目にコツコツやるしか方法がない。ロールプレイングゲームみたいに強い武器を手に入れれば戦闘力が上がるとか、そういう世界じゃない。毎日の課題を丁寧にクリアしていく。変な言い方ですけど、究極のドブ板営業をしている人が、日本一になるんです。どんなに忙しくても、先輩たちは絶対に手を抜くことはありませんでした。たとえ、そのお客さまが海外や地方からきていて、リピーターにならないことがわかっていても全身全霊を注いでいる様子を見てきました。だから、自分が今サロンワークするときはもちろん、スタッフにも絶対に手を抜くようなことはさせません。

 

 

一方で、自分の経験や考え方を若い人に押し付けるのはよくないと考えています。たとえば、今ウチの店で一番売れているスタイリストは、3年前は全く売れていなかったんです。どうにか売れるスタイリストにしようと「毎日名刺を配って、ドブ板営業しろ」と言ったんです。結局、彼は僕の言いつけを守らず、韓流アイドルの髪型を再現するInstagramがバズって大ブレイクしました。月20万円くらいだった売上が今やその40倍に。そのとき、若い世代を肯定する大事さを学びました。自分が知らないこと、理解できないことがこれからのトレンドになるし、僕らの世代の正解が将来は間違いになることもあり得ます。自分の理解の範疇にない夢に向かって行動している人をみると、ついつい否定したくなってしまうもの。で、いつか気づいたらドリームキラーになってしまう。ウチには僕にはない感覚のスタイリストがいて、「ウルフカット」「エロ髪」「ハイライト」とかいろんな特技を持っています。イチイチ否定していたら、自分のウリを押し出せず、小さく縮こまっていたかもしれません。ちなみに、彼がブレイクした後、安定して売れている理由は、どんな仕事も一切手を抜かないからです。自分の打ち出し方が変わっても、コツコツやることが成功の近道であることはいつの時代も変わらないと思います。

 

プロフィール
NORA
代表/広江 一也(ひろえかずや)

1974年生まれ。奈良県出身。高校卒業後、大手ゼネコンで勤務。関西美容理容専門学校(現グラムール美容専門学校)を経て都内有名店に入社し、店長などの要職を経験後、独立。表参道に「NORA」を設立。2013年に「NORA Journey」をオープンさせ、2014年には青山で「NORA」の拡張移転を果たす。2017年にはフィリピンへの出店し、2019年は大阪に「NORA UMEDA」をオープン。昨年も「NORA GINZA」「NORA KICHIJOJI」と展開し、今年は渋谷店、鎌倉店のオープンをひかえている。

 

(文/外山 武史 撮影/菊池麻美)

 

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