男性アーティストを支えるメンズ専門ヘアメイク・大木利保。レディースサロン出身からトップクリエイターへ。「目の前の全力が未来をつくる」
メンズヘアメイクへと導かれた転機
――いつ頃から、メンズのヘアメイクの仕事をされるようになったんですか?
ある日、メンズのヘアメイクの依頼が来たんです。メンズカットはカリキュラムにも含まれていたので対応できましたし、普段から男性スタッフのスタイリングを任されることも多かったので、「自分でもできるかもしれない」と思って引き受けました。それをきっかけに、少しずつメンズの現場の仕事が増えていったんです。
その後、アーティスト関係の仕事をいただくようになってからは、新しいグループがデビューするたびに現場も増えていき、自然と仕事量も広がっていきました。現場にはレコード会社の方も来ているので、そこで信頼関係が生まれ、さらに別の仕事につながることも多くて。気づけば、メンズの仕事量がレディースを上回るようになっていました。そこで思い切って方向を定め、メンズヘアメイクを専門にやっていこうと決めたんです。

――それは面白い流れですね。
本当にありがたい巡り合わせでした。入社した当初は、カリスマ美容師の専属アシスタントになることも想像していなかったですし、そもそもヘアメイクの仕事をするとも思っていませんでした。
ただ目の前の仕事を一つひとつ本気でやってきた結果、今の仕事に繋がったのかなと思っています。
――「メンズのヘアメイクになりたい」という強い目標があったわけではなく、気づいたら目の前に壮大な仕事が待っていたと。まさに導かれた感じですよね。
将来の夢を持つことももちろん素晴らしいと思います。でも僕自身は、「その日にできることを全力でやる」ことを大事にしてきました。例えば、挨拶をきちんとすること。実は、その瞬間に全力でできることって、意外とたくさんあるんですよね。
僕はそういう小さなことを積み重ねてきただけなんです。大きな夢を掲げて突き進むというより、目の前のことをコツコツやってきた感覚ですね。SNSでも“バズること”を狙うより、自分が楽しみながら全力で向き合えるかどうかが大事だと思います。サロンワークなら、目の前のお客さまや一緒に働くスタッフが気持ちよくなる挨拶ができているか、喜んでもらえているか。美容学生なら、先生や仲間に「この人と一緒にいると気分がいい」と思ってもらえるかどうか。そういう日々を大切にしていると、あとから振り返ったときに「運が良かった」と思える流れにつながるのかな、と思います。

――当時はかなりの仕事量だったと思いますが、大変ではなかったですか?
本当に忙しくて、毎日必死でしたね。前日にしっかり段取りを考えて、当日はそれを一つずつこなしていく。「よし、今日も終わった。明日も頑張ろう!」という感じでした(笑)。
1日1日に全力を注ぐ、ということを無意識に続けていたのかもしれません。今でも「自分なんてまだまだだな」と思っていますし、常に新鮮な気持ちで仕事に向き合っています。昔からいじられキャラでもあるので、現場で小走りしていると、年下のスタッフから「ボンさんって走ったりするんですね」なんて笑われることもあって(笑)。でも、今でもわりと必死なんですよ。
※ボンさん…大木さんのニックネーム