DADA CuBiCの魂を受け継ぐ者、小林和哉が語る美容師の本質。教育×デザインの頂点へ。妥協なきクオリティ、尽きぬ情熱。長く活躍できる“美容師の真髄”
どんな“環境“に身を置くかで、成長度が変わってくる

――DADAといえば「環境づくり」に対するこだわりも際立っていますよね。店内の細部に至るまで、クリエイターとしての美意識や思想が息づいているように感じます。
やはり感性を磨くという側面からも、普段から目にするものというのは大事ですよね。内装もかなりこだわっていますが、本物のグリーンを植えたり、壁面収納に選りすぐりの写真集を置いているのも、目に入るだけで感性が磨かれるからです。本は、紙のにおいやページをめくるときの音、言葉や写真から得る感動など五感をフルに使うので、美容師の仕事につながるところもありますし。

DADAの床は白いタイルなので、カラー剤が落ちたら染みてしまうんですね。だから汚れたらすぐ拭きます。壁はすべてガラスを貼っているので、物が当たると簡単に亀裂が入るんですよ。必然的に、ていねいな所作が求められます。今は亡き創業者の植村(故・植村隆博氏)が、人としての行動や所作にこだわっていたんですね。アカデミーのカーテンのまとめ方がグシャっとなっていたら、ドレープを綺麗に直すように言われましたし、物を無造作に置くと叱られました。作業的な動作が好きではなかったんです。

――ていねいな所作が、お客さまの髪の扱い方にも通じるということですね。
その通りです。お客さまへの気遣いという点でも、ていねいな行動はすごく大事なことです。僕はそれをアシスタント時代に叩き込まれたので、贅沢な環境で育てられたなと思っていて。これだけの歴史があるサロンなので、お客さまも各界で活躍されている目が肥えた方がたくさん来てくださっていますし、すごくいい経験ができています。
――撮影の現場もたくさん経験してきた小林さんは、ご自身もカメラを手にして、撮影しているとか。
自分で撮影もしますが、自分で撮ると自分の目線に限定されてしまうんですよね。プロのカメラマンに撮っていただくことで「こうやって切り取るんだ」という新たな視点に気づくことができて、デザインの見え方が変わるんです。視野が広がるので、客観的な立場から撮っていただくことも大事にしています。それに撮影現場で築く信頼関係だったり、そういう目に見えない経験もすごく価値があると思っているので、撮影は好きですね。

思い出の作品の前で。羊にウィッグを被せる、という発想がユニーク