「スターにはなれない」。限界を感じるほどの葛藤を経てWilleで見つけた可能性—sai MOTAIさん

スター選手にはなれないけど、スターを育てることならできる

 

 

今までは「スターにならなければいけない」と思っていましたが、Willeでは「スターになれる人を育てる」とか、「プロデュースする力が自分にもあるのかもしれない!」という考え方に切り替えることができました。野球でいえば、誰もがエースの4番になれるわけじゃないのと一緒で、僕はスターにはなれないことが分かったんです。

 

プロデュースのおもしろさを知ったきっかけはWilleですが、自分本意だった僕が組織の大切さに気づいたのは、前サロンでの経験から。スタイリスト3年目のときに、すごく好きな2人の後輩がサロンを辞めてしまったときに、「盛り上げたいと思っていても人はあっけなく辞めてしまうこともある。経営者ってこういう気持ちなんだ」って痛感したんです。当時の僕は納得できないと思うことだけに目がいっていて、会社とのコミュニケーションがまったくできていませんでした。でも、経営陣が考えていることを、同じ目線で考えられなかったり、会社とのコミュニケーションができていないと、辞めていく後輩を引き止められないし、会社にも引き止めてもらえないんですよね。

 

そういった経験を経て、僕がWilleで理想として取り組んでいたのは、美容師という職業を選んでよかったと言えるような教育です。美容師にもいろいろな選択肢がある時代なので、組織に残ってもいいし、副業をしてもいいし、ヘアメイクやフリーランスとして活動するのもありです。Willeで育ててきたスタッフがどんな道を選ぶとしても、美容師を選んでよかったと思ってもらえれば、幸せです。

 

これからは修行! 30歳を過ぎて先輩がかけてくれた言葉の意味がわかった

 

 

独立を決めたのは、2年ほど前。Willeの環境に甘んじているような気がして、「このままではまずい」と感じたからでした。僕は、スタッフがネガティブな理由で辞めないサロンを目指して、Willeに関わってきました。しかし、スタッフが辞めてしまうことはある。そして、その責任は結果的に経営者が取ることになってしまうんですよね。

 

僕はWilleの最年長として、Willeのオーナーとスタッフの気持ちをわかったつもりで教育をしてきました。だけど、会社に守ってもらっている上に、居心地のよい今の立場では、経営者と同じ目線に立つことはできないと思ったんです。

 

独立にあたり「おめでとうございます」と周りから言っていただくのですが、僕にとっては経営者としての修行だと思っています。saiでは、一過性のヒットではなく、時間をかけて大きな花が咲く過程を一緒に歩めるような、長い目で人を育てていける企業体力や教育方針をつくっていくつもりです。

 

30歳を過ぎてようやく10歳年上の先輩たちが新人の僕に言ってくれた言葉を、理解できることが増えてきました。これまでのうれしかったことも悔しかったことも、支えてくれる人や会社があってこそ。微力ながらも、より多くの魅力的な美容師さんを育てていくことで美容業界への恩返しになれば…と考えています。でも本音は単純に、自分の好きな仕事をよりよい形でたくさんの方に知ってもらえたらうれしいんです。この仕事をしていて、「辞めよう」と思ったことはあっても、「つまんない」と思ったことは一度もありません。美容師は、常にドラマや夢がある職業だと思います。

 

プロフィール
Wille
アートディレクター/MOTAI

1986年生まれ、長野県出身。住田美容専門学校卒業後、都内サロンに8年間勤務。Willeのオープニングスタッフとして参加。2019年6月に独立し「sai」をオープン。現在はベルエポック美容専門学校の特任講師やセミナー、撮影、コンサル業など幅広く活躍中。

 

 

 

(取材・文/土屋美緒 撮影/河合信幸)

 

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