限界オタク美容師えりやさんが語る、オタク美容師とお客さまが集う「TOKYO OTAKU HAIR」とは?

「場所」としての力を育てていきたい。美容師の未来とB to B

 

 

「トーキョー オタクヘア」では、スタッフがコスプレをしてサロンワークをするコスプレ営業を定期的にやっていたのですが、始めたきっかけはコロナ禍でした。世間ではさまざまなイベントが次々と中止になって、お客さまが本当に落ち込んでいたんです。イベントに行くのが生きがいだった人たちが、「何もなくなった」って感じている様子を見て、美容室で少しでも、イベントに行ったような“非日常”を提供できたらと考えました。今はリアルイベントも戻ってきたので、頻度は減りましたが、特別な日などにはやっています。

 

 

今後は、もっと“場所”としてのポテンシャルを活かしていきたいと思っています。原画展や、小規模な即売会のようなイベント、作家さんのサイン会もやりたいですし、実際に商業BLの販売もスタートしました。出版社の方がお客さまとして来てくださって、それがきっかけで取り扱いが実現しました。特典付きで販売もできるので、ファンの方にも喜んでもらえています。

 

それともう一つ、私が今個人的に考えているのがB to Bの展開です。美容師さんって、B to Cの働き方しか選べないことが多くて、でも副業したいっていう人は本当に多いんですよね。将来が不安だったり、育児で働ける時間が限られたり、理由はさまざま。でも、何かがやりたくても、何をどう始めればいいかわからない人が多い。だから、美容師さんが美容以外の価値提供もできるようなコミュニティをつくっていきたいと思っているんです。

例えば、絵が描ける人にはアイコンを描いてもらったり、文章が書ける人にはSNSの発信を任せたり。そういう“小さな実績”が積み重なれば、B to Bでも仕事を受けることができてやりたいことが形になっていくんじゃないかと。その入り口になれたら嬉しいです。

 

 

私は今、オーナーという立場ではありません。よく「自分でサロンをやらないの?」と聞かれるんですけど、正直、今はまだ、その必要性を感じていないんです。もちろん、自分がオーナーになることで自由になる部分はありますし、できることの幅が広がることもあるかもしれませんが、スピード感としてはどうしても遅くなってしまうんですよね。それに、今の環境でも十分にやりたいことを実現できている。協力してくれる人たちがいて、スピーディーに動けるなら、それが一番だと思っています。

必要になったときには、そのときに形を変えればいい。今はこの場所で、自分たちの“好き”をかたちにして、誰かの“好き”とつながれる、そんな空間を育てていきたいです。

 

プロフィール
トーキョー オタクヘアー
店長/えりや

神奈川県出身。アイム湘南理容美容専門学校卒業。横浜、表参道のサロンを経て現在の「トーキョー オタクヘア」の店長に。オタクの美容師もオタクの顧客も心地よいサロン作りに注力する一方で、美容師のB to B副業支援など、カルチャーとビジネスを横断した新しい取り組みにも意欲的。

 

(文/須川奈津江 撮影/松林真幸 MIKAN inc.)

 

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