業界屈指の離職率の低さ。レベルの高いスタッフと、追求したオタクなおもしろい店を作っていきたい—10年サロン「UMiTOS」のブランディングストーリー後編

採用では「自分はこの子をサポートできるか」を第一に意識する

 

 

他のメディアでもよく言ってもらえる通り、『UMiTOS』は離職率がとても低いです。このくらいの規模の美容室だと毎月1人は誰かしらやめたり、年間数人は離職したりするものですが、うちは年間1人やめるか、やめないかというくらい。

 

それは「共生教育」の一環として、「目標達成最短システム」を導入していることも大きいです。「売り上げ重視タイプ」、「デザイン重視タイプ」、「プレミアム雇用」の3つのコースを用意して、それぞれのスタッフが目指す目標を寄り道せずに達成できるようにしています。

 

「売り上げ重視タイプ」はその名の通り、自分の売上を作ることができる美容師を目指す人を最大限にフォローするコース。「デザイン重視タイプ」の人は私のヘアメイクの現場に同行し、高いセンスと技術力を養います。「プレミアム雇用」は体や心の問題で、普通の美容室では働けなくても輝いて働ける人のためのコースです。

 

スタッフを雇うって、すごく重大なことです。だから私は「自分のお店を手伝ってもらう」という気持ちではなくて、きちんと雇われる側の立場に立って考えるようにしています。だから面接で「こうなりたいです」という理想像を聞いて、ゴールがちょっと違うと思ったらうちでは正直に伝えています。「自分がこの子の夢をサポートできるか」を第一に考えていることは、他の店と違うところかもしれません。

 

 

現在〜未来 スタッフ多様化期

年齢を重ねた経験豊富なプレーヤーがいられるサロンを目指して

 

自ら課題を決め、その課題に向き合う「孤高の時間」

 

たぶん、うちのスタッフたちに「独立したい」という人が少ないのは、現在の環境が簡単に作れるものではないことをわかってくれているからではないでしょうか。なんとなく「働きやすいな」と感じているだけではなくて、自分がオーナーになってこれだけのことをやるとしたら、もっと成長しなくちゃいけないと思うのだと思います。

 

もちろん、独立の夢を見ることも大切です。でも、夢を叶えるタイミングって、「お前はもう大丈夫だから行ってこい!」って、社会が自然に送り出してくれるときなのかもしれません。

 

焦って独立してしまって、最初の5年くらいはうまくいっても、新規がとれずに落ちていくということはよくあります。それに、やめるときにいざこざがあると、狭い業界なので後に問題が残ります。やみくもにデビューするのではなくて、レベルの高い人たちが集まって、みんなで最高峰のお店を作っていくのもいいはず。今働いてくれているスタッフは、そのためにはここがいいな、と思ってくれているのだと思います。

 

今後の展望は、年齢を重ねたスタッフがい続けてくれて、それによっておもしろみが増していくようなサロンを作っていくこと。

 

現在の美容業界には、年配のプレーヤーがそれほど多くいません。でも、新しいスタッフが入ってくるときは、やっぱり年上のスタッフを自分の未来形として見るもの。そんなときに、参考になる年配のプレーヤーがいなかったり、いても魅力的じゃないと思われたりするのは残念です。

 

私は、若くてフレッシュな感性も大切だけど、「考える」ということが本当にできてくるのは50歳を過ぎたあたりからだと思っています。美容を研究するなら、若手ばかりよりも経験豊富な年配がいたほうがよりおもしろくなるでしょう。

 

美容はもっと深くて楽しくて、ドキドキする可能性が本当にたくさんあるんだってことを示していきたい。そのために、年齢を重ねたツワモノたちが長く居続けてくれるような、おもしろいサロンを目指していきます。

 

プロフィール
UMiTOS
代表/砂原由弥(すなはらよしみ)・ちょきみ

都内の有名店店長を経て、出産を機に2008年に独立。 母親が40年間続けてきた美容室を継ぎ、千葉県南房総に「海と砂原美容室」をオープンののち、2011年青山に「UMiTOS」をスタート。サロンでは「共生教育」という独自の教育方法を実施している。ファッション雑誌、美容業界誌の表紙、CM、ドラマ、大河ドラマのポスター含め、PV、広告、カンヌ、ヴェネチア、香港、日本アカデミーショーなどの映画祭など多方面に活躍し、サロン活動に加え、芸能人のヘアメイクも数多く担当。全国各地からのセミナー講師、カットコンテストやフォトコンテストの審査員などのオファーも絶えない。著書に『なりたい自分は髪でつくる』(誠文堂新光社)、『はじめてのおうちカット』(アノニマ・スタジオ)、共著に『一刻もハヤクツマラナイゲンジツから脱出スル方法』(コワフュール・ド・パリ・ジャポン)などがある。

 

(取材・文/小沼理 撮影/河合信幸)

 

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