理想の女性像のライフスタイルを実践して築いたブランディング TETRO 宗万夏子さん―トレンドメーカーの「ブレイン解剖」
トレンドの一歩先を行くクリエイティブを生み出す美容師は、どんなヒトやモノにインスパイアされるのか。クリエイティブな感性を持つ人たちに直撃取材し、紐解いていくのがこの企画「ブレイン解剖」です。
今回は、TETRO(テトロ)のスタイリスト宗万夏子(そうまん なつこ)さんのインタビュー。アーティストやクリエイターが数多く通い、個性的かつ実力派揃いのTETRO。美容師歴14年目という宗万さんは、映画や読書などのカルチャーに親しむ一方で、自身のライフスタイルの変化こそが、現在打ち出すヘアスタイルの決定打になったといいます。
自分の理想の女性像を描き、集客につなげたい女性美容師さん、必読のインタビューです。
「私にはカルチャーがない」バックグランドのあるおしゃれを知るためにTETROに
TETROは私にとって2社目のサロンですが、オープニングから参加しているので、今年でちょうど10年目になります。新卒で入社したのは都内の有名サロンで、4年ほど在籍していました。技術はもちろんのこと、美容師自身のブランディングの方法や魅せ方など、たくさんのことを学びましたね。
その頃、私もそのサロンが得意としているブロンドやピンクヘアなどのスタイルを打ち出していたのですが、デビューしてしばらくすると、好きな系統も変わってきて。「今、自分に足りないものはなんだろう?」と考えるようになったんです。それで気づいたのが、自分の発信しているおしゃれは表層的で、カルチャーがないということ。そこで、次のステージではバックグラウンドまで含めたおしゃれやカルチャーを身に付けたいという目標ができました。
サロンのスタイルと自分の理想との差を感じる中で、当時から私が「この人が良いと言っているものは、自分も好きだな」と思っていたのが、現在TETROにいるスタッフたちだったんです。その人たちが独立してサロンを出すという話を聞いて、その環境で学びたい!と、TETROに活動の場を移しました。
うちのスタッフは、映画や音楽、写真集、ドラマなどから受けるインスピレーションをすごく大事にしている人たちです。ヘアやファッション一つを取っても、「この映画のこういうところが良かったから、ヘアやファッションに取り入れた」という話をよくしていていました。それを聞くたびに「かっこいいな」と思っていましたし、自分もそんな美容師になるのが理想でした。
TETROに入ってからは、私もそうしたカルチャーに積極的に触れていったのですが、その結果、いろいろなものに影響を受けすぎて、自分の方向性がわからなくなってしまった時期もありました。おしゃれの本質を追求したり、バックボーンのある人の話を聞いたりしていると、どれもかっこいいし、かわいく思えてきて、統一感がなくなってしまうんですよね。
試行錯誤を重ねる中で、「自分がどんな女性になりたいか」を練り直して、その理想を自分の生活に落とし込んでいきながら、しっくり来るものを選ぶことに決めました。そのスタイルにたどり着いたのは26歳くらいのことですが、今も変わらず、私のブランディングの根幹になっていると思います。
方向性を定めるために、まず自分の生活から変えた
自分の理想とする女性像としてまず考えたのは、「私生活が充実している女性」でした。それまでスキンケアにもあまり興味がなかったのですが、本格的にやり始めたら、気分が明るくなって、マインド的にもすごくよかったんですよね。それをきっかけに、SNSでメイクやスキンケアについて発信し始めたことで、ヘアメイクの仕事にもつながるように。公私ともに相乗効果があって、すごく運が良かったと思いますね。そこからはありがたいことにヘアメイクの仕事も増えていき、20代はサロンワークにヘアメイクに…とがむしゃらに働く日々。ただ、30代前後になってくると、忙しすぎると体調は整わないし、お客さまの前に出るコンディションも良いとは言えなくなってくるんですよ。
そうした日々の中で、自分が一番大切にしたいことを考えた結果、ヘアメイクの仕事からは離れ、サロンワークに注力することに決めました。空いた時間はピラティスやよもぎ蒸しに通ったり、ハーブの勉強をするなど、ウェルネスにも目を向けるようにしたんです。そうしたら断然体調がよくなって、心地よく働けるようになりました。
自分自身に魅力がなくなってしまったら、軸もぶれてしまうし、全てが仕事のためになってしまうとライフスタイルの確立もできません。それこそ、仕事以外の時間がないと、映画や音楽を楽しんだり読書をしたりといったインプットの時間もなくなってしまいますからね。
>ライフスタイルを変えると、打ち出すヘアも変わる――その真理とは?
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