リピーターが増えること確実!? 「ツァイガルニック効果」を利用した接客術

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突然ですが、みなさんは「ツァイガルニック効果」という言葉をご存知でしょうか。実は今、このツァイガルニック効果のビジネスシーンへの応用が注目を集めています。そこでツァイガルニック効果を利用した接客術について、ビジネス心理コンサルティング株式会社の代表である林恭弘(はやしやすひろ)さんに伺います。新規のお客さまにリピーターとなってもらえるヒントがココに!

 


 

 

そもそもツァイガルニック効果とは?

 

そもそもツァイガルニック効果とは、「『人間は達成できなかった物事や、中断・停滞している物事に対して、より強い記憶や印象を持つ』という心理学的な現象です」と語る林さん。

 

「例えば、テレビを観ているときに、『続きはウェブで』と伝えた後でクリックマークにカーソルを合わせて『カチッ』で終わるCMや、『続きはCMの後で』『このあと、衝撃の結末が!』といったフレーズを使う番組がありますよね。これはまさしく、情報を完結させないことで視聴者の関心を継続させる、というツァイガルニック効果を用いた手法です」

 

人間は、完成・完結した物事に対しては達成感を抱き、ほかの物事へと意識を移すことができますが、未完成・不完全なものに対しては、なんともスッキリせず、心地の悪さを感じてしまうものです。そして、この「やり残し感」が記憶に残り、「完成させたい」「スッキリしたい」という欲求を湧き立たせることで、その欲求が興味や関心となり、深く印象付けられるのです。

 

ツァイガルニック効果を使った3つの効果的な接客術

 

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このツァイガルニック効果はリピーター獲得にも応用できると林さんは語ります。具体的な接客方法を3つ教えていただきました。

 

①相手の興味を引く世間話は、「次回につづく…」

 

「接客中にお客さまとの会話が弾むと、美容師の方もついうれしくなってたくさん喋ってしまうかもしれません。しかし、あなたが話すウエイトが3割以上になると、お客さまはあなたの話を『聞かされた』という印象を持ってしまいますし、逆に2割未満になる、と会話としてはお客さまの情報発信ばかりに感じられ不自然になってしまいます。

 

ですので、まず、お客さまとの会話の基本として、あくまでも7割~8割のウエイトで『聞き役』に徹すること。その方がお客さまから好かれるでしょう」

 

また、林さんによると、盛り上がる会話をあえて次回に持ち越すことが、お客さまにまた足を運んでいただくためのポイントとなるのだそうです。

 

「『盛り上がる会話』というものは、そのほとんどが互いに共感している内容です。つまり『共通項』があるから盛り上がるわけです。例えば、お互いイタリア料理が好きなのであれば、『イタリアン、私も大好きなんです。○○町にできたお店が話題になっていますね。え、もう行かれたんですか! いいな〜、私も行ってみます』なんて会話で自然に盛り上がることがありますよね。

 

そのように『このお客さまと自分の共通点や共通項は何かな?』という意識で会話をし、盛り上がったら、『今度は私のイチオシのお店情報をお教えしますね。楽しみにしていてくださいね』と、あえて『次回につづく』形で締めくくるようにしましょう。お客さまの印象に残って、次回の来店を楽しみにしてくれるでしょう」

 

②髪の手入れについて段階的に情報提供する

 

「お手入れの仕方を教えてさしあげる美容師さんも多いですよね。ここでもツァイガルニック効果を使ってみてください」

 

この時の大切なポイントについて、「一回の来店について提供する情報は一つにしぼることです」と林さん。お客さまに喜ばれる情報をたくさん持つと、一度に全て話したくなるかもしれませんが、「一回に、一つだけ」を積み重ね、「次回またとっておきのネタをお伝えしますね」と、笑顔でお見送りするとよいのだそうです。

 

また、この方法は「会えば会うほど、人間は親密感を持つ」「親切にされた人には、何かお返しがしたくなる」という人間の心理も働くため、ほかのお店に浮気せずにあなたのサロンに通い続けてくれる確率が上がるのだそうです。

 

③「次回はもっと素敵になれる」と予想させる

 

ツァイガルニック効果は、「未完成ゆえに、かえって気になる」という効果を含んでいるため、この「未完成」というキーワードを接客のなかで活かしてみるのもよいのだそうです。

 

「もしあなたがスタイリストであれば、あなたとお客さまは言わば『先生と生徒』のような関係です。なぜならばあなたの方が髪の毛に関しては詳しいプロフェッショナルだからです。ですから、そこにはぜひ、プロ意識を持って接するべきでしょう。

 

例えば、髪の毛が少々痛んでいるお客さまの場合なら、『乾燥と紫外線が強い季節ですから、少し髪が傷んでいますね。毎日トリートメントすることでヘアデザインのバリエーションがすごく広がるんですけどね』と、さらにお客さまが素敵になる可能性を伝える。そして、『まずはこのトリートメントを1ヶ月試してはいかがでしょうか。保湿成分が驚くほど高いと、業界でも注目になっているトリートメントなんです』と自信を持って薦めるわけです」

 

もちろん、強引なセールスは、美容師にとってもお客さまにとってもストレスとなり、お客さまに二度と来店してもらえない可能性も含んでいるため、あくまでも選択の自由はお客さまにあることを心がけ、プロとして薦めることが大切。

 

しかし、このように「1ヶ月、2ヶ月と経過することで、どんどん素敵になれる」という、未完成から完成へと近づいていくうれしい予想をプレゼントすることで、お客さまに「またお店に訪れたい」と思っていただくことができるのだそうです。

 

さっそく今日から実践!

 

ただサロンのリピーターになっていただくだけでなく、お客さまに「来店する楽しみ」を持っていただくことができる、ツァイガルニック効果。みなさんもぜひ、紹介した接客術を今日から実践してみてはいかがでしょうか。

 

プロフィール
ビジネス心理コンサルティング株式会社
代表/林 恭弘(はやし やすひろ)

企業の人事・教育コンサルタント会社を経て、2010年ビジネス心理コンサルティング㈱を設立。エグゼクティブを対象とした講演活動から幼児教育事業まで幅広く教育分野に携わる。経営者、管理職、一般職、労働組合、教育、医療、行政などを対象とした講演会・研修会で全国を飛び回り、4000回以上の講演会・研修会を担当し、多方面において幅広く活動を展開する。

(取材・文/阿部夕華)

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